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田中秀征 政権ウォッチ

なぜチャーチル元英首相は国民の信頼を得られたか
危機下でこそ国民が見抜く「指導者の真贋」

田中秀征 [元経済企画庁長官、福山大学客員教授]
【第84回】 2011年6月2日
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感動的なフランス農民のエピソード

 危機が大きければ大きいほど、指導者と民衆の信頼関係が強くなければならない。それは歴史の鉄則と言ってもよい。

 ヒトラー・ドイツとの戦いを勝利に導いたイギリス首相チャーチルは、単にイギリス国民ばかりでなく、多くのフランス国民からも強い信頼を受けていた。

 ヒトラーのロンドン空爆は死者15万人を超えたが、市民はひるむどころか、率先して消防隊員や民兵となって抗戦し、チャーチルを非難する人はいなかった。特にドイツが投下した不発弾を処理する市民部隊は語り草となっている。20個も30個も不発弾を処理した後に爆死した一般市民も少なくなかった。

 第二次世界大戦を通じて、チャーチルが自ら「最も苦痛に満ちた決断」と言っているのは、フランス艦隊撃沈の決断だった。

 チャーチルは、北アフリカのフランス海軍基地にあったフランス艦隊が、ヒトラーの手に渡るのを恐れてその撃沈を決断して実行した。これによって多くのフランスの水兵が犠牲となった。

 ところがその後、フランスのある村の農民の感動的な出来事がチャーチルに伝えられた。

 それは、チャーチルの決断の犠牲となった水兵の葬儀で、棺の上に、フランスの三色旗と並べてイギリスの国旗、ユニオン・ジャックがかけられていたというのである。

 要するに、わが子が犠牲となりながら、チャーチルの決断の正しさを信じたのだ。

 チャーチルはこれについて『第二次大戦回顧録』でこう書いている。

 「ここからわれわれが読みとることができるのは、庶民の分別ある精神とはいかに至上の高みにまで達しうるものかということである」

 これは、数ある歴史書の中で、私が最も印象深い話の1つである。

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田中秀征 [元経済企画庁長官、福山大学客員教授]

1940年長野県生まれ。東京大学文学部、北海道大学法学部卒業。
83年、衆議院議員初当選。93年6月、新党さきがけ結成、代表代行。
細川政権発足時、首相特別補佐。第一次橋本内閣、経済企画庁長官。
現在、福山大学客員教授、「民権塾」塾長。


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かつて首相特別補佐として細川政権を支えた田中秀征が、期待と不安に溢れた現政権の動向を鋭く斬り込む週刊コラム。刻一刻と動く政局をウォッチしていく。

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