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データ・ドリブン・マーケティング
【第2回】 2017年4月21日
著者・コラム紹介バックナンバー
マーク・ジェフリー,佐藤純,矢倉純之介,内田彩香

データ・ドリブン・マーケティングは、
驚くような企業間格差を生んでいる

昨年末にヤフーの宮坂社長が「これからはデータ・ドリブン企業と呼ばれたい」と発言して、一気に日本でも認知が広がった感のある「データ・ドリブン・マーケティング」。数回にわたってそのエッセンスを紹介する『データ・ドリブン・マーケティング――最低限知っておくべき15の指標』は、世界最強のマーケティング企業アマゾンのジェフ・ベゾス氏の愛読書であり、アメリカ・マーケティング協会が選出する最優秀マーケティング・ベストブック(2011)の待望の邦訳である。

マーケティング格差は
どこから生まれるか

 私は、サウラブ・ミシュラ、アレックス・クラスニコフと共同で、マーケティングのPDCAプロセスおよびマーケティング投資収益率(ROMI: Return on Marketing Investment)に関する調査を行った。

 調査参加企業は252社、その年間マーケティング予算は総額530億ドルという大規模なものだ。この調査により、上位企業とそうでない企業の間に横たわる格差が浮き彫りになった。具体的に見られた顕著な差として、以下のようなものが挙げられる。

●53%の企業は、キャンペーンのマーケティング投資収益率(ROMI)、正味現在価値(NPV: Net Present Value)、顧客生涯価値(CLTV: Customer Lifetime Value)をはじめとする効果測定指標の目標値を設定していない。
●57%の企業は、マーケティング・キャンペーンの予算策定にあたり、ビジネスケース(稟議のための財務計画)を作成していない。
●61%の企業には、マーケティング・キャンペーン案の選別、評価、優先順位付けプロセスに関する明文化されたルールがない。
●69%の企業は、テスト・マーケティング群とコントロール群を分けた対照実験による効果検証を行っていない。
●73%の企業は、キャンペーン単位で予算化前に設定した獲得目標と、実際の結果とを照らし合わせるためのスコアカードを利用していない。

 これらの調査結果に、私はショックを受けた。過半数の企業にマーケティング活動を管理するプロセスがなく、また、大半の企業で効果を判断する指標の設定や測定なしに日々のマーケティング活動が行われているのだ。

 予算化される前に財務計画やマーケティング投資収益率(ROMI)が設定されていなかったら、いったいどうやってキャンペーンの成否を判断するというのだろうか。マーケティング組織におけるデータの活用状況を見ると、格差はさらに明白だ。

●57%の企業には、各キャンペーンをトラッキングし、分析するための一元化されたデータベースがない。
●70%の企業は、自社やキャンペーンと顧客との接点をトラッキングし、分析するためにエンタープライズ・データウェアハウス(EDW)を利用していない。
●71%の企業では、マーケティング・キャンペーンの実施可否判断にあたりEDWやデータ分析を使用していない。
●80%の企業は、イベント・ドリブン・マーケティングを自動化するための統一されたデータソースを持っていない。
●82%の企業は、マーケティング・リソース・マネジメント(MRM)のような自動化ソフトウェアによるキャンペーンやマーケティング資産のモニタリングを行っていない。

 つまり、データを集約してマーケティング活動の管理や最適化ができている企業は少ない。一方で、できている約2割の上位企業は、データ・ドリブン・マーケティングを使いこなし、日々のマーケティング活動においても適切な指標で効果測定を行っている。後述する通り、これらの企業は業績や市場シェアでも同業他社に大きく差をつけている。

 なぜこのようなマーケティング格差が存在するのだろうか。また、なぜデータ・ドリブン・マーケティングの実践は難しいのだろうか。

 前述の調査結果は、データ・ドリブン・マーケティングやマーケティング効果測定が企業に根づきにくい理由の表れでもある。社内プロセスは効果測定を前提としていないし、データ・ドリブン・マーケティングに必要なITインフラも整っていない。しかしながらそれ以前に、私の経験上、多くのマーケティング担当者は大量のデータに圧倒され、成果を向上させるための効果測定についてはどこから手をつければよいのかがわからない、という状態にある。

 加えて、55%の管理職が自分の部下はNPVやCLTVといった指標を理解していないと回答している。あなたの属する組織が世の中の8割の企業と同様にデータ・ドリブン・マーケティングを実践できていない、あるいはあなた自身がこれらの指標に馴染みが薄いからといって悲観する必要はない。本書を使って、上位企業との間の溝をぜひ埋めてほしい。あなたの職場でマーケティング指標を使ったデータ・ドリブン・マーケティングを実践してもらうために適切な指標、ツール、事例および手順を示すことが本書の目指すところだ。

『データ・ドリブン・マーケティング――最低限知っておくべき15の指標』より

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マーク・ジェフリー Mark Jeffery

ノースウェスタン大学 ケロッグ経営大学院 非常勤教授。同校のテクノロジー&イノベーション研究センターのテクノロジー・イニシアティブ・ディレクター。エグゼクティブMBAコースで「戦略的データ・ドリブン・マーケティング」の講座を担当、複数のエグゼクティブ・プログラムを監督する立場にある。フォーチュン1000社のうち252社の戦略的マーケティング・マネジメントを調査するなど、その実証的な手腕で評価される。マイクロソフト、インテル、デュポンをはじめとする著名企業のコンサルティングにも携わっている。Agile Insights LLCのマネージング・パーナーを務める。

佐藤純

デジタル時代のブティック・コンサルティング・ファーム、ブースト・コンサルティング合同会社 代表。ウェブ/データ解析コンサルティング・ファーム、株式会社プリンシプル 顧問。コンサルティング、スタートアップ投資、自社事業の3足のわらじ。東京大学経済学部卒業、カリフォルニア大学バークレー校ファイナンスディプロマ(最優秀)取得、ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院戦略的データ・ドリブン・マーケティング・エグゼクティブコース修了。ボストンコンサルティンググループにて経営コンサルタント(2000~2002年)。新生銀行にてインターネットチャネルの立ち上げ、収益チャネルへの成長に貢献(2002~2006年)。本書の全体監修を担当。

矢倉純之介

東京大学経済学部卒業。ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院経営学修士(MBA)。大手飲料メーカーにてマーケティング、事業企画、クロスボーダーM&A業務を経験。現在は所属事業部門が本部を置くアメリカで経営企画業務に従事。本書の冒頭から第6章までの翻訳を担当。

内田彩香

和光大学人文学部卒業。編集プロダクションでの勤務の後、オーストラリアRMIT大学で通訳ディプロマ、翻訳学の修士課程を修了。以来メルボルンを拠点にフリーランスの翻訳者として活動。本書で第7章から第11章まで翻訳を担当。


データ・ドリブン・マーケティング

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「データ・ドリブン・マーケティング」

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