筆者は「福島原発震災 チェルノブイリの教訓(4)」でこう書いた。
「福島原発の事故は、国際原子力事象評価尺度(INES)でチェルノブイリ原発事故並みのレベル7に引き上げられた(4月12日)。放射性物質の総量が未発表なのでなんとも言えないが、原子力安全・保安院と東京電力の記者会見を報じた各紙記事によると、放出された放射性物質の量は数十万テラベクレル(保安院と原子力安全委員会の推計で差がある)で、チェルノブイリの520万テラベクレルに対して10%だということだ(1テラベクレルは1兆ベクレル)」
「初期の爆発と1週間後の火災による大量飛散によるものと考えられる。レベル7は1-3号機に関する評価であり、4号機は核燃料プールの事故だから含まれていないが、全4機の内部に存在する放射性物質の総量はチェルノブイリより多いのは当然で、4倍から数倍だろう」
この記事を書いた時点(4月10日)より詳細が分かってきた。後述するが、「事故1週間後の火災」によるものではなく、降雨による影響だと分かった。
1号機の爆発前から放射性物質は外部に出ているので、津波ではなく、地震によって原子炉のどこかが破損し、放射能が漏れたことになる。その後、津波によって冷却装置が動かなくなり、燃料棒は1、2、3号機とも短時間で全面的に溶融(メルトダウン)したと推定されている。
つまり、大量の放射性物質が環境に放出される「最悪の事故」はすでに起きていたことになる。チェルノブイリとの違いは、大爆発による大飛散か、小爆発による飛散かの違いだけだ。
大と小の差が10分の1ということになるが、大気中に放出された放射性物質よりも、現在、汚染水10万トンのなかにある放射性物質は72万テラベクレルと、こちらのほうが大量にある。
うまく処置しないと本当にチェルノブイリ並みの事故になってしまう。いま、なんとなくニュースが減り、なんとなく原発全体が落ち着いているように思えるが、実態はどんどん悪化している。現場で作業している方々には感謝の言葉もないが、私たちはよく情報を収集し、生活に役立てるよりほかはない。