『週刊ダイヤモンド』4月29日・5月6日合併号の第1特集は「保険 地殻変動」です。保険業界にとって、マイナス金利の影響が深刻になってきました。運用難だけではなく、主力の保険商品が成り立たない事態にまで追い込まれているからです。さらには、金融庁による保険販売に対する見直し圧力も――。また、足元では「保険版フィンテック」の勃興で、商品そのものの枠組みが変わろうとしています。そうした保険業界を揺るがす地殻変動ぶりを取り上げました。

 今年3月、生命保険業界は空前の駆け込み需要に沸いた。ある大手保険代理店の社長は、「3月は前年度比で200%超え。とりわけ、4月から保険料が大幅にアップする円建ての終身保険の売れ行きは凄まじく、前年度比で260%を記録しました」と振り返る。

 日本銀行によるマイナス金利政策の導入から1年と少し。その影響はかなり大きい。冒頭の保険代理店社長の言葉にもあるように、4月から円建ての終身保険など貯蓄性保険商品の保険料が軒並み、大幅にアップするからだ。

 理由は、長引く低金利を反映して、平準払い商品の「標準利率」が、1.00%から0.25%にまで引き下げられたこと。

 標準利率とは、将来の保険金支払いに備えてためる責任準備金を計算する際の利回りのことで、10年物国債の過去3年間の金利などを基に決められる。

 昨年までは、0.25%ではなく、0.50%という声も聞かれていた。だが、0.25%という史上最低の利率にまで押し下げ、とどめを刺したのは、間違いなくマイナス金利政策だ。実際、1月ごろからちらほらと出始めた生保各社の、4月以降の保険料アップの知らせが、生保業界で話題にならない日はなかったほどだ。

 500万円の終身保障を買うために、支払う保険料の総額は534万円──。

 これは極端な例としても、保険料の支払総額が保障額を超える例が続出、それ故に、商品性を維持できずに販売停止が相次ぐなど、これまでの生保業界の常識を根底から覆すような事態が、そこかしこで起こっている。

 それほど、生保業界にとって金利低下の影響は大きい。なぜなら、契約時点での利回りが、保険期間が終了するか、解約するまでずっとついて回るからだ。