あなたはこれから知らぬ間に高いものを買っていくことになるかもしれない――。人手不足や、紙製品など原燃料価格の上昇を理由にした製品価格の値上げ宣言が相次ぐ。加えて夏以降には酒類が確実に値上がりしそうで、さらには、家電までが値上げになりそうな雰囲気だ。果たして、その理由とは。(流通ジャーナリスト 森山真二)

マスコミ各社は「値上げの春」と報道
中でも不透明なのが「官製値上げ」

 このところ、マスコミ各社から「値上げの春」というような報道が増えている。重油や石炭といった原燃料の値上がりを理由にした、家庭紙や印刷情報用紙など紙製品の値上げである。また、円安のあおりを受けた輸入原料の値上がりや、国際市況の高騰を受けたオリーブオイルの値上げなどと、食品や日用品などいくつかの商品分野で価格改定の動きが活発化している。

 ただし、メーカーから値上げが打ち出されても、流通側がそれをすんなりと受け入れるかどうかは、消費者の節約志向が強まるなかで微妙な情勢だ。

 というのも、紙製品などはこれまでも、何度となくメーカーから原燃料の値上げを理由にした値上げが公表されている。だが、その都度、流通側の競争原理によって、すんなりと値上げが浸透したということがあまりないのが実態だからだ。そのため、幾度となく、「値上げの公表」だけが繰り返される格好となっているのだ。

 そもそも値上げは、消費者からはあまり好意的には受け入れられないものだ。とはいえ、メーカーから打ち出される場合はそれなりの理由があってのことであり、仕方ないこともある。国際市場価格などに基づいた価格転嫁などがその一例だろう。しかし、きちんとした根拠や理由がなければ、すんなりとは受け入れられない。その典型的な事例が、知らず知らずのうちに価格統制で誘導されていく「官製の値上げ」であり、今後、いくつかの官製値上げが続きそうな気配なのである。