今や日本に負けす劣らず消費者の目が厳しいと言われる中国のアパレル市場。ワールドなどで20年以上ファッションビジネスに関わり、現在はアパレル以外の商材も含めて、アジアで様々な事業のプロデュースを行なう事業開発研究所株式会社の島田浩司社長に、中国でファッションビジネスを成功させるカギについて聞いた。
――日系アパレルブランドが、中国進出でよく陥る失敗には、どんなことがありますか。
日本のやり方・基準を、そのまま中国に持ち込んでしまうことです。
中国で自社商品が売れない場合に、日本人責任者が決まって言うことがあります。「中国はファッションレベルがまだ低いから、ウチのブランドは売れない」という言い訳です。日本とは異なる中国という市場を、日本の基準でしか見ていないのだから、売れなくて当たり前です。
自分にとって未知の市場であればあるほど、感覚ではなく、データなどのファクトで見なければいけません。中国の場合、幸いなことに、主要な百貨店、ショッピングセンターのテナントごとの売上データはカネを出せば手に入るので、そういうファクトを通して市場を見なければダメなのです。
また、「とりあえず出店してみる」というスタンスで失敗するケースも多いですね。「中国では全く無名のブランド」にもかかわらず、中国進出時の予算に入っているのは店舗の出店費用だけ。出店以上に大切な「新市場でブランドを立ち上げる」コストを考慮していない会社も多いです。
店さえ出せば売れると考えているのかもしれませんが、そんなに簡単にうまくいくはずがありません。たまに「まぐれ」でうまくいくケースもあるかもしれませんが、私に言わせるとこれはビジネスではなくギャンブルです。ビジネスでは、「負ける戦をしないこと」が大切です。
中国で商売をする場合には、特にスタートダッシュが肝心です。初戦に勝つか負けるかで、次の展開が大きく違ってきます。初戦に勝てば、営業しなくてもよい条件でドンドン出店依頼が来るのに対し、最初に売上が上がらないと、次の出店場所探しに頭を下げてお願いして回るという、極めて不利な状況が待っています。
最初の段階から、負けないような周到な準備と、何がなんでも結果(売上)を出すことが重要です。