雑念回路「DMN」が脳疲労を生む

もうおわかりかと思いますが、DMNこそが脳エネルギーの最大の浪費家です。
つまり、ここに脳の疲れの正体があるというわけですね。

「週末は家でぼーっとしていただけなのに、なぜか月曜日の朝から頭が重い」という経験は誰にでもあると思います。こういうときは、DMNの活動が過剰になっている可能性があります。

これはいわば、ブレーキをかけたままアクセルを空ぶかししているのと同じです。心身ともにしっかり休ませたければ、ただダラダラと過ごすだけでなく、しっかりとDMNを鎮めるアクションが必要になります。

疲労というのは物理的な現象ですが、あなたに「“疲れた”という感じ」をもたらしているのは、あなた自身の脳です。つまり、疲労感とは脳の現象にほかなりません。

だとすれば、脳の休息法を手に入れることは、あなたの人生に活気をもたらすうえで、決定的な意味を持っているはずです。

「いや、私は本当に何も考えずぼーっとしているだけなんです」という人も、どうか振り返ってみてください。意識的ではないにしても、あなたの頭のなかにはいろいろな雑念が浮かんでは消えを繰り返しているのではないでしょうか?

実際、DMNは心がさまよっているときに働く回路として知られています。「人間の脳が1日の半分以上を“とりとめもない考え”に割いている」と聞くとびっくりしますが、それくらい私たちの心は雑念だらけということですね*03。

*03 Killingsworth, Matthew A., et al. (2010) “A wandering mind is an unhappy mind.” Science 330.6006: 932-932.

といっても私は、DMNを完全な悪者にしたいわけではありません。まだ研究の余地がありますが、この脳回路には特別な役割があるとも言われています。つまり、問題なのは、DMNの活動が行きすぎてしまうことなのです。