今国会の会期は、二転三転の末、最終日の6月22日、70日間延長されることに決まった。

 自分の思惑通りに進んだ菅直人首相は余程うれしいのか、笑顔を隠せないようであった。

 しかし、私は、首相が「試合に勝って勝負に負けた」と思えてならない。

「70日間の会期延長」と引き換えに失った
党執行部からの信頼

 首相は、今まで地位を得て、地位を維持することに成功してきたが、一方でそのたびに大きなものを失ってきている。

 6月2日の衆議院での不信任案騒動でも、首相は、結果的に「大差で否決」に持ち込んだものの、結党以来の盟友である鳩山由紀夫前首相をはじめ多くの同志、友人を失った。

 今回もまた、会期延長問題で自分の意向を通したが、今まで盾となって首相を捨て身で守ってきた岡田克也幹事長や枝野幸男官房長官の信頼を失った。

 今回は、最終的には、対自民党、対小沢一郎の闘いではなく、菅政権を支える中心人物たちとの闘いだったように見える。

 会期延長問題はあくまでも国会の問題。与野党間で文書までかわして合意したものを、首相が反古にした例を私は知らない。

 これでは、民主党の幹事長や国会対策委員長は当事者能力を持っていないことになる。これから野党は、首相と直接交渉しなければ何ごとも決まらないことになってしまう。岡田幹事長や枝野官房長官は煮え繰り返るような気持ちであろう。

 岡田幹事長が作成した野党との合意事項は、(1)特例公債法と第2次補正予算の成立、(2)再生エネルギー特措法の採決、そして(3)第3次補正は菅政権の後継政権が担当、が主な内容であった。

 この時点で、多くの人は、大震災への対応が、与野党間の新しい信頼関係によって大きく前進すると期待しただろう。

 これを踏みにじった首相が孤立無援の状態になるのは止むを得ないが、そのマイナスはさらに国政の停滞を長引かせることになる。