フランス大統領選で極右政党、国民戦線のルペン代表が敗れたことで、ポピュリズム台頭の流れが止まったと見る向きもあるが、果たしてそうなのだろうか。「ポピュリズムとは何か」(中公新書)の著者でもある水島治郎・千葉大学教授(欧州政治)は、「ポピュリズムは、先進国で既成政党の政策に影響を与えながら“主流化”されてきた」と指摘する。グローバル化の加速により、中流層にも繁栄に「取り残された層」が増える中で、格差是正や雇用創出に手を打たない限り、ポピュリズムの「熱狂」は収まりそうにない。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン特任編集委員 西井泰之)
ポピュリズムの主張が
既成政党の主流となっている
──オランダに続きフランスでもポピュリズム政党の政権獲得は実現しませんでした。
表向きは、ポピュリズムの「熱狂」は勢いを失ったようにも見えるかもしれないが、政党政治に焦点をあてると、まったく逆の姿が見える。
フランス大統領選では、従来の二大政党である共和党と社会党の得票率が、合わせても2割強しかなかった。二大政党の候補が決選投票に残れなかったのは初めてだ。オランダでも、右派ポピュリズム政党の自由党は第1党にはなれなかったものの、議席を伸ばし第2党になった。与党も自由民主人民党が第1党を維持したのは、自由党の台頭に危機感を抱き、ルッテ首相自らが選挙戦で激しい移民批判を展開したからだ。
それまで、移民批判は人種差別につながるというので、既成政党には忌避されてきた。その意味では、排外的ポピュリズムの主張が既成政党に影響を与え、「主流化」したともいえる。