久々に、元気が出るニュースを聞いた。すなわち、わが国の構造改革に繋がるニュースだ。東京大学が、入試は変えずに入学時期を春から秋に移行させる検討に入ったという(2011.7.1.日経朝刊トップ記事)。
秋入学は、まさに大学国際化の切り札であり、制度的にも2008年から学年の始期と終期は学長判断で決められるよう規制緩和がなされていた。それでもどの大学も一歩を踏み出すことが出来なかったのである。わが国大学の頂点に立つ東大が先陣を切ってその一歩を踏み出したことを高く評価したい。
大学の競争力はビジネス界の競争力の先行指標
株価は景気の先行指標であるとよく言われている。それに準えれば、基礎研究やリベラルアーツを受け持つ大学の国際競争力は、その社会、ビジネス界の国際競争力の先行指標であると言えるのではないだろうか。
ところで、わが国の大学の国際競争力は、現在、どのような水準にあるのだろうか。国際高等教育情報機関である英国クアクアレリ・シモンズ社の「QS世界大学ランキング2010」によると、1位がケンブリッジ大学(英国)、2位がハーバード大学(米国)、3位がエール大学(米国)で、東大が24位、京大が25位となっている。なおアジアでは、香港大(23位)が僅差で東大を上回り、初のアジア首位大学の座を射止めた。
もちろんQSランキングについては、トップ10がすべて英国と米国の大学によって占められており、わが国では「英語の壁」を指摘する向きも少なくはない。その側面がないとは言わないが、大局的に見ればこうした指摘はイソップの「すっぱいぶどう」の話と同じではないだろうか。どのような土俵・ルールであっても真に強い者はやはり強いのである。
ともあれ、GDP世界第3位の経済大国である日本の大学の競争力がこのように世界に大きく劣後している現状は、わが国社会・経済の先行きに一抹の不安を掻き立てるものである。東大が秋入学に向けて一歩を踏み出した背景には、こうした危機感があるものと思われる。