名刺入れを取り出すのに、リュックの中をガサゴソとやらなければいけないのも、なんとも不恰好である。お辞儀をしたら、中身が雪崩のように落ちてくるなんて、コントみたいなことも起こる可能性がある。私服でも使えるのが魅力だが、だからこそ公私のけじめがつけにくい。

 ……と、スーツにリュックが非常識な理由を思いつく限り挙げてみたものの、これといって決定的なものはなく、だからこそどうするべきか迷ってしまう。著者の知人は、毎日リュックを背負って通勤しているが、取引先に向かう時にはリュックから職場に置いてある手提げカバンに持ち替えるのだという。こうした謎の行動を人々にとらせてしまう“歪み”を、当連載では「B級新常識」と呼んでいる。「平成しぐさ」と言い変えてもいい。

車内で背負う行為に“リュック災害”の声も

 そんな中、明確に「マナー違反」と言えるのは、混んでいる電車の中でリュックを背負う行為だろうか。「ダカーポ」1998年8月19日号では、「電車の中で『特に迷惑だ』と感じるマナーの悪さ」の第4位が「リュックサック」だという、小田急電鉄の調査結果を紹介(1位は携帯電話)。そのうえで同誌は、電車が混んでいるのにもかかわらずリュックを棚に上げず、前にも抱えず、後ろに背負ったままでいる迷惑行為を、“リュック災害”と名付けて断罪している。

 日本民営鉄道協会が2016年に実施した調査でも、「荷物の持ち方・置き方」に関することが、駅と電車内の迷惑行為ランキングで4位に選ばれており、“リュック災害”への批判は根強い。

 電車の中でのマナーはさておき、とはいえ見掛けの面においても、機能性の面においても、“スーツにリュック”がそんなに非常識だとは、個人的には思わない。ただ、筆者はフリーランスなので普段はスーツを着ないため、リュックを背負うとさすがにカジュアルになりすぎてしまう。完全に、そこらへんにいるお兄ちゃんだ(事実そうなのだが)。

 “スーツにリュック”はフォーマルとカジュアルのギャップが問題になるのだが、カジュアルにカジュアルを重ねると、ただの「身軽な私服」になってしまうので、取材などの際にはせめて革製のトートバッグを持つようにしている。もちろん、「失礼だと思われるリスク」と「持ち運びの楽さ。便利さ」を天秤にかけ、後者を選ぶ人もいるが、そこはあくまで自己判断だ。

 あなたは、このB級新常識をどう感じただろうか。当連載についてご意見がある方、もしくは「こんな常識を取り上げてもらいたい」という情報をお持ちの方は、筆者のTwitterアカウントにご連絡いただきたい。すべてには返信できないが、必ず目を通したいと思う。

(フリーライター 宮崎智之)