ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
野口悠紀雄 未曾有の大災害 日本はいかに対応すべきか

怒涛のようにアジアにシフトする自動車産業の将来は?

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第20回】 2011年7月7日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

 これまで述べてきたように、震災後日本の貿易収支が赤字になったのは自動車の輸出が落ち込んだからだ。そして、そうなった理由は、震災によって自動車生産のサプライチェーンが損傷したからである。前回見たように、他の生産が回復するなかで自動車生産だけが回復が遅れている。

 その結果、6月29日に公表された6月上旬の貿易収支も、1655億円の赤字となっている。

 ただし、サプライチェーンは、秋頃には回復するだろうと予想されている。それに伴って自動車の生産も回復し、自動車の輸出も増えると予想されることから、日本経済が回復すると期待する向きが多い。

 しかし、本当にそうなるだろうか?

 増加する自動車需要は主として新興国におけるものであるため、コスト的に国内生産では対応できず、現地での生産で対応せざるをえない。したがって、実際には、生産拠点の海外移転がさらに進む可能性が高い。その半面で、自動車輸出は、経済危機以前のように増加することはないだろう。日本の貿易構造は大きく変わると考えざるをえない。

国内の販売が落ち込み、アジアでの販売が急増

 「国内の販売が落ち込み、アジアでの販売が急増する」という現象は、震災前から進んでいる。

 【図表1】は、トヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業について、国内と海外の販売台数と生産台数を比較したものである。

 2010年3月期と11年3月期を比べると、どの社でも、海外での販売台数が急増している。

 日産の場合、アジアにおける2011年3月期の販売台数は、10年3月期に比べて、36.2%増(中国は35.5%増)ときわめて高い伸びを示した。この結果、総販売台数に対する海外の比率は、86%にまで高まった。アジア以外の海外地域の販売台数の伸びも2桁増で、かなり高い。

 ホンダでも、同じ傾向が見られる。売り上げの国内比率は、いまや16%でしかない。

 それに対して日本国内の販売台数は、各社とも減少している。これは、エコカーなどの購入支援策が終了したことが大きく影響しているのだろう。

 トヨタは、日産、ホンダに比べれば国内の比率が高いが、それでも海外売上高比率は70%から74%に上昇した。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

------------最新経済データがすぐわかる!------------
『野口悠紀雄 使える!「経済データ」への道』


野口悠紀雄 未曾有の大災害 日本はいかに対応すべきか

3月11日に発生した東日本大震災。その人的被害が凄まじいのはもちろんのこと、その後の日本経済に対しても長期的に深刻な問題を与えることが懸念される。こうした状況を乗り越えるために、日本はどう立ち上がるべきなのか。

「野口悠紀雄 未曾有の大災害 日本はいかに対応すべきか」

⇒バックナンバー一覧