6月下旬、世界の金融監督当局で構成されるバーゼル銀行監督委員会の首脳グループ会合で、巨大金融機関に対する資本規制の枠組みが固まった。その中身は、邦銀にとってはいずれも受け入れやすい条件となっており、外交オンチの日本としては快挙といえた。金融庁を中心とした日本の金融当局はどう動いたのか。
Photo by Toshiaki Usami
「邦銀に都合のよい指標になっている」「金融危機を招く直接の原因とは関係ない」──。
日本のメガバンク3行の命運を握るであろう国際交渉の場で、日本の金融当局が提案した金融規制の独自案は、世界20ヵ国以上の当局関係者から袋だたきにあった。
それでも日本側に焦りはなかった。なぜなら、反発が起こるのは織り込みずみだったからだ。
中世の街並みがいまなお残るスイス・バーゼル。この国際都市を舞台として、リーマンショック後、水面下も含め2年にわたって続いたこの交渉はその後、日本が敷いたレールの上で議論され、6月25日、バーゼル銀行監督委員会の首脳グループ会合でついに大枠の合意に至った。
結果を聞いたメガバンク首脳は「日本の金融外交史上、初めての歴史的な勝利だ」とほめ称えた。
というのも、合意内容には日本のメガバンクに有利な文言が並んでいたのだ。国際交渉の場で長年、外交オンチと評されてきた日本政府にあって、その汚名を返上する快挙といっても過言ではなかった。
報酬体系は“捨て駒”
基準は日本の思惑どおり
交渉の狙いは、「too big to fail」(大き過ぎてつぶせない)とされた世界的な巨大金融機関である「G-SIFIs(ジーシフィーズ)」の規制強化だった。