執着心を捨てたからできることとは?

 筆者がサラリーマンを辞め会社を設立する時、先輩の実業家の人から「どうだ? 不安か?」と声をかけられたことがありました。

 その時、筆者が「正直言うと、少し不安です」と答えると、彼は「君の実家は資産家かい?」と聞いてきました。

 筆者の父親は公務員ですので、ごく普通の経済環境でした。

 それを説明すると「だったら君には失うものは何もないじゃないか」「資産家から見ればサラリーマンの中でのお金の多寡など、所詮、ドングリの背比べだよ」と彼は笑ってくれたのですが、この一言でかなり、気持ちがラクになったことを覚えています。

 確かに筆者が入った企業は、世間的に見れば一流企業ということになるのかもしれませんが、彼が言うように、サラリーマンでの稼ぎなどたかが知れています。

 自分が勤めている会社の給料について、絶対に失いたくない大事なものと考えるのか、会社を辞めても、自分と家族がとりあえず生活できる程度はなんとかなる、と考えるのとでは大きな違いです。

 両者を分けるのがお金に対する執着心なのです。

 筆者はあまり意識していませんでしたが、20代で得た知識や経験を通じて、お金に対する無用な執着心から自分自身を解放することができました。

 こうした感覚があったからこそ起業に踏み切ることができましたし、その後も、稼いだお金を惜しみなく次の投資に回すことができ、これが後の資産形成につながったわけです。