今の40~50代が18歳当時に経験してきたのは、「大学入試がとても重要だ」という実体験だ。だから親は、子どもに対して大学受験に一番お金を投資している。しかし、現代社会の実態はと言うと、子どもの人生にとって本当に重要なタイミングは中高受験と就活に変わりつつある。

 はっきり言って、「いい大学に入れるか」で人生が決まるという考えは、古い常識になりつつある。今では「いい仲間に恵まれた中学・高校生活を送ることができるか」「就活で成功できるかどうか」の2つの要素の方が、人生にとってはるかに重要である。

 そう考えると代々木ゼミナールも、本体より子会社で学習塾大手のSAPIXの方がビジネスとしては有望だろうし、ナガセは東進や早稲田塾よりも四谷大塚の方が将来は発展するかもしれない。

就活ビジネスを視野に入れると
早稲田塾の閉鎖はもったいない?

 一方で、重要なわりにまだ市場が大きくなっていないのが就活予備校だ。実質的に子どもの未来を決めてしまうという意味では、中学受験や大学受験で失敗するよりも就活に失敗する方がはるかに影響が大きいにもかかわらず、就活予備校は教育産業として育っていない。

 これはおそらく、お金を払う親の世代にその意識が欠けているからだろう。もう少し時間が経って、就職氷河期で苦労をした世代の親が大学生の親になる、数年ないし十年くらい先には、就活が今よりもはるかに大きい産業に発展する可能性は高い。

 さて、就活教育という観点では、実は代ゼミは経営的視点からちゃんと力を入れている。少子化を見据えて早めに校舎を不動産ビジネスに転用したのと同様に、代ゼミは就活についても常に時代の先を見ているのかもしれない。

 就活教育は、受験以上に個別に個人の強みを引き出しながら、合格する可能性が高い企業への対策を考えて、伴走するサービスだ。その観点で言えば、東進ハイスクール型の「有力講師による最強コンテンツ」に力を入れるビジネスモデルよりも、早稲田塾型の「伴走ビジネスモデル」の方が、未来に通用するビジネスアセットとしては重要だ。

 おそらく今回の閉鎖決定で、来期以降のナガゼの業績は再び増益に転じるだろう。ただ長期的に見ると、今回の閉鎖が「第三の教育ビジネスの構造変化を取りこぼしてしまった」という後悔につながらなければいいと私は思うのだが、どうだろうか。

(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)