食は、どうなる。
【第7回】 2011年7月13日 足立直樹

国が定める食の“安全基準値”は信用できるのか?

 ほんの少し前まで、食と安全と言えば、化学物質や農薬、重金属、病原菌などによる汚染の問題でした。しかし、今、多くの人が心配するのは、なんと言っても放射能による食品の汚染ではないでしょうか。

 目に見えず、匂いもない放射能は、食品がそれによって汚染されていても、私たちには気がつきようもありません。しかも、食べてすぐに中毒になったり障害が出たりするのではなく、症状が出るのはかなり時間が経ってからです。そして何年か後でガンなどの病気になったとしても、その原因を特定することはおよそ不可能でしょう。しかも狂牛病などこれまでの汚染と異なるのは、ありとあらゆる食品が汚染されている可能性があることです。

基準値を超える食品など
流通していないと考えるのは甘い

 放射性物質で汚染されたものを食べると、何が問題なのでしょうか?

 一般に、体内の放射性物質から被曝する内部被曝は、空気中に存在する放射性物質により身体の外側から被曝する外部被曝に比べて、遥かに影響が大きくなります。なぜなら、放射線の線量は線源からの距離の二乗に反比例するので、距離が圧倒的に短い内部被曝は影響も非常に大きいのです。

 また、非常に怖いことに内部被曝の場合、放射線物質は長期間体内に溜まり続けます。このため特定の細胞などが長期にわたって被曝され、たとえ線量が少なくても癌などを誘発する危険性を高めるのです。

 最近は、食品に含まれる放射性物質の量も測定されているので、規制値以下の食品を食べている分には問題はないだろう、そもそも、規制値を超えるような食品は市場には流通していないはず、そう考える方がいるとしたら、残念ながらそれは甘い考えと言わざるを得ません。

 今、検査されている食品は全体のほんの一部に過ぎないからです。膨大な量の食品を一つひとつ測定できるわけもなく、あなたが手に取る食品が規制値以下であるという根拠はきわめて希薄です。

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足立直樹

東京大学理学部卒、同大学院で理学博士号取得。国立環境研究所、マレーシア森林研究所(FRIM)を経て、コンサルタントとして独立。専門分野はCSR、環境経営、環境コミュニケーション。日本生態学会常任委員、環境経営学会理事、環境省生物多様性広報・参画推進委員会委員、環境省生物多様性企業活動ガイドライン検討会委員、国際NGOナチュラル・ステップ・ジャパン理事、サステナビリティ日本フォーラム運営委員などを務める。


食は、どうなる。

現在、私たちをとりまく食の背景には、安全性の問題や、気候変動の影響など、とても複雑な事情や問題が絡み合っています。私たちが食べているものを様々な視点から見て、私たちの命を支えている食の仕組みをあらためて考えてみましょう。

「食は、どうなる。」

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