食は、どうなる。
【第7回】 2011年7月13日 足立直樹

国が定める食の“安全基準値”は信用できるのか?

日本の「暫定規制値」は
国際的に見れば甘すぎる値

 また、原発から放射され拡散した放射性物質はそのときの風向きや雨などによって、ごく局所的に降り積もることもあります。いわゆるホットスポットを作るのです。ですから、ある畑の作物で問題がなかったとしても、その地域の畑の作物が安心である保障はまったくありません。

 いえ、同じ畑の中でだって、かなり大きな変動があるはずです。つまり、県単位、市町村単位で「安全」という理屈は成り立たないわけです。

 そしてさらに重大な問題は、現在の日本の「暫定規制値」は、国際的に見れば甘すぎる値だということです。

 たとえば現在、厚生労働省が定める食品の暫定規制値は、成人の場合、野菜類・穀類・肉・魚・卵などに含まれる放射性セシウムは500ベクレル/kgとなっています。一方、チェルノブイリ原発事故で被害を受けたベラルーシの野菜の規制値は100ベクレル/kg、ウクライナでは40ベクレル/kgとなっています。これらの基準に比べてみると、日本の基準がいかに緩いかがわかるでしょう。

 いや、これは非常事態の暫定的な値だからしかたないのだという声も聞こえてきそうです。たしかに、WHOが設定した非常事態の基準値は1,000ベクレル/kgです。しかしこれは本当にそれ以外に食べるものがなく、餓死を避けるための、背に腹は代えられないという場合の値です。

 事故からはもう4ヵ月も経ったわけですし、今の日本は餓死を起こすような食料不足の状態ではありません。一体いつまでこんな「暫定」規制値を使うつもりなのでしょうか。

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足立直樹

東京大学理学部卒、同大学院で理学博士号取得。国立環境研究所、マレーシア森林研究所(FRIM)を経て、コンサルタントとして独立。専門分野はCSR、環境経営、環境コミュニケーション。日本生態学会常任委員、環境経営学会理事、環境省生物多様性広報・参画推進委員会委員、環境省生物多様性企業活動ガイドライン検討会委員、国際NGOナチュラル・ステップ・ジャパン理事、サステナビリティ日本フォーラム運営委員などを務める。


食は、どうなる。

現在、私たちをとりまく食の背景には、安全性の問題や、気候変動の影響など、とても複雑な事情や問題が絡み合っています。私たちが食べているものを様々な視点から見て、私たちの命を支えている食の仕組みをあらためて考えてみましょう。

「食は、どうなる。」

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