心身にダメージを受けて休職する部下が続出。それも、会社が投入したエース級のできる社員が次々つぶされていく……。あなたの会社に、そんな部署はないだろうか? それは、「クラッシャー上司」のせいかもしれない。

 クラッシャー上司とは、部下をつぶして自分は出世していく猛烈型の上司。エリートで仕事はでき、業績をきっちりあげるが、心身共につぶれた部下のことを思いやることはない。それどころか「もうちょっとできるやつだと思っていたが」と吐き捨てるほどだ。

「特に長い歴史を持つ上場企業などに多く見られます。あなたのしていることはパワハラですよ、と指摘しても、『そんなことを言われるのは心外だ。あいつはこのくらいのことをしないと伸びない』と判で押したように否定します。共感力がないのが共通項なので、相手の心中を想像できないのです」

 そう話すのは、『クラッシャー上司』(PHP新書)の著者で、医学博士で産業精神医学・宇宙航空精神医学の専門家でもある松崎一葉氏。15年ほど前、産業精神医学の専門家としてある職場のメンタルヘルスケアをしていたところ、優秀な社員のように見えて実はメンタル不全を起こしているケースが散見された。その原因を探る中で共通項として浮かび上がったのがクラッシャー上司の存在だったという。

 例えば、部下につきっきりで指導する、一見親切に思えるクラッシャー上司。文字通り"つきっきり"で、朝から晩まで、さらには休日も部下と椅子を並べて指導する。もともと仕事に熱中すると寸暇も惜しむタイプで、自分と同じペースを強要するため、トイレすら上司のタイミングに合わせるほかなかったという。部下は結局メンタルをやられ、出社できなくなってしまった。