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厳しい環境下でも「クビ切りはしない」「社員に優しい会社」と豪語してきた大和証券グループ本社に衝撃が走っている。7月1日、この時期としては異例の大規模な配置転換に踏み切り、実質的なリストラに乗り出したからだ。
2009年末に三井住友銀行との合弁を解消して以降、大和の経営状況はいかにも厳しい。同年の公募増資で調達した約1500億円の資本は、赤字続きで11年3月期にはすべて吹き飛んだ。とりわけ、先行投資を続けるアジア事業で赤字を垂れ流す状況が続く。
この現状を打破すべく大和は今年5月、日比野隆司・新社長体制の下、新たな経営ビジョンを策定。収益改善策の一環として、主に管理部門から収益部門へ人員をシフトさせるといった効率化による400億円程度のコスト削減策を打ち出していた。
今回はそれに基づき、約400人の社員を、大和証券(個人向け)の支店営業、大和証券キャピタル・マーケッツ(大和CM、法人向け)の未上場企業営業、そしてアセットマネジメント(資産運用)部門の3収益部門などに配置転換させた。
ところが社員たちにとっては、その中身がじつに衝撃的だった。新たに支店に配属された約200人のうち、半数の約100人にも及ぶ社員が、人事部付の「トレーニー(研修生)」なる肩書を与えられたからだ。
これら社員の大半は過去に支店経験がある30代後半~40代の次長クラス以上。にもかかわらず、都内の研修所で約1ヵ月にわたって再度、証券用語などの基礎知識を学ぶ“座学”を強いられるというのだ。そのため「ついに事実上の退職勧奨か」と、社内に波紋が広がったというわけだ。
むろん大和側は「社員のクビは切らない」と、こうした観測を強く否定する。だが、当初の狙いに加え、自主退職による“リストラ効果”まで得ようとしているのではないかとの見方は根強い。
ただ経営陣にとって悩ましいのは、むしろこうした管理職よりも、「若手の優秀な人材が早くも流出し始めていること」(大和幹部)だ。ある金融業界のヘッドハンターも、「若い転職希望者が大和から殺到している」と明かし、戦力ダウンは必至の状勢だ。
それでも改革の手綱を緩めるわけにはいくまい。目下、大和の最重要課題は投資適格ギリギリの格付けを維持することにある。そのため、「外資勢や国内大手に比べれば、まだ余剰人員を抱えた部署が少なくない」(同)とされる大和CMを中心に、第2弾として今期中にも「600人規模の異動を実施する予定」(同)だという。
さらに経営陣は、大和証券と大和CMの統合についても検討しており、上期中にも決断を下す。その過程で再度、“痛み”を伴う改革に着手する可能性もある。大和内に広がる動揺はしばらく落ち着きそうにない。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 池田光史)