
パナソニックの車載電池は、かつては世界トップを誇っていたが、中韓勢が台頭した現在ではシェアが激減し、プレゼンスは低下している。そこに追い打ちをかけるように、世界的な電気自動車(EV)の失速や主要顧客米テスラの不振など不測の事態が続き、「内憂外患」状態にある。特集『パナソニック 正念場』の#10では、パナソニックグループの成長領域である電池事業の苦境を徹底解明するとともに、反転攻勢に転じるための課題を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 今枝翔太郎)
米国の「脱・脱炭素政策」による逆風の中で
パナの車載電池にとっての二つの“救い”とは
世界的な電気自動車(EV)失速が、パナソニック ホールディングス(HD)の注力事業を直撃している。空調とサプライチェーン・マネジメント・ソフトウエアと並び、三大投資領域の一角に位置づけられていた車載電池の事業環境が悪化し続けているのだ。
かつてパナソニックは、車載電池で世界トップシェアを誇っていた。しかし、次ページの図で見るように現在では中国・韓国勢の台頭を許しており、シェアは大きく低下している。
パナソニックは、米国のEVメーカー、テスラとタッグを組むことで車載電池事業を維持・拡大してきた。今年7月には、北米第2工場となるカンザス州の工場で量産を開始した。主な供給先はテスラとみられる。
しかし、EV市場の伸び悩みに米トランプ政権の“脱・脱炭素的”政策が拍車を掛けたことなどにより、テスラのEV販売は不振に陥っている。このため、カンザス工場がフル稼働する時期は見通せていないようだ。現在、事実上“テスラ一本足”となっているパナソニックにとって、テスラの不調は電池事業の急落に直結する緊急事態だ。
しかもここにきて、パナソニックHDが1万人の大リストラを断行するなどグループ全体で構造改革を進めている。電池事業を手掛けるパナソニック エナジーにリストラの波が押し寄せないのかも気になるところだ。
「内憂外患」に陥っている電池事業が反転攻勢に出ることはできるのか。
次ページでは、パナソニックの電池事業が陥っている苦境を徹底解明するとともに、反撃に転じるための課題を明らかにする。