経営者の姿勢を問う「働き方改革」

 一億総活躍社会実現を目指す「働き方改革」は、中小企業経営者の経営姿勢を問う取り組みでもあります。

残業代を払うと会社が潰れるなら、経営者を辞めるか事業構造を変えよ小宮一慶
小宮コンサルタンツ代表

 働き方改革により解決すべき課題のひとつに「長時間労働の是正」がありますが、中小企業では長時間労働に伴う残業代を支払わないというケースも少なくありません。

 経営者を対象としたセミナーなどで残業代が話題になった時、私が残業代の不払いは法令違反なのだから払うべきだと指摘すると、経営者の中には、残業代を払うと会社の経営が成り立たない、残業代を払って会社がつぶれると従業員も困るだろうと反論する人もいます。

 そんな経営者に対し、私は、残業代すら払えないなら事業構造を変えるか、それができないなら事業をやめてしまえとはっきりと言うことにしています。法律に違反してまで従業員から搾取して経営者を食わせる必要はありません。

 経営コンサルタントの一倉定先生は「従業員には同じ地域の同業他社よりも1割高い給料を払え」とおっしゃっています。それこそが経営者の当たり前の考え方です。

 ただ誤解して欲しくないのは、どの中小企業も従業員に長時間労働低賃金を強いているというわけではないということです。

 一般の大企業より高い給料を払っている中小企業を私は少なからず知っていますし、私のお客さまの中には、給与とは別の次元で、従業員が自ら進んで工具を家に持ち帰り夜にそれを磨き、「早く明日が来ないか」と会社に行くことを楽しみに思っている素晴らしい会社もあります。

 もちろん、そんな会社ですから高収益で、同業他社よりも高い給料を支払っているだけでなく、2年に一度は150人ほどの全従業員さんを海外研修に連れて行っています。どんな会社でも働きがいを高めれば、高収益企業を作れるのです。