40歳過ぎから妻の顔色や機嫌が悪化
妻への対処法に悩む勤務医Aさん(49歳)

多忙だった開業医の父を反面教師に
家族との時間を大切にする日々

 Aさんは民間病院の勤務医だ。当直と学会でなかなか休みがとれないが、たまの休日には、なるべく家族と過ごすように心がけている。なぜなら、自身が、小児科の開業医だった父と一緒に過ごした思い出がまったくないからだ。

 Aさんの父親は、夜間や休日も関係なく、具合が悪くなった赤ちゃんや子どもの診察を受けつけていた。夜中に駆け込んでくる不安な顔をしたママたちに「大丈夫よ」と声をかけて、手を握ったり肩を抱いたりするのが薬剤師であるAさんの母親の役目だった。

 徹夜で診察しても、次の日は夫婦でにこにこと穏やかに診察を続けていた医師の父親と薬剤師の母。近所の子どもたちには恐れられながらも尊敬されていた。

 しかしAさんは、そんな両親を誇りに思う反面、遊園地や海水浴に当日行けなくなるのも常だった。毎年夏休みの絵日記は、ラジオ体操だけ。ハンコを押してもらう紙を首から下げて公園に集まった思い出しかなかった。

結婚し、仕事を辞めてから変わった妻
「今日もつまらなかった」が口癖に

 Aさんが結婚したのは20年前。結婚当時は「バブル崩壊」「不景気加速」「失業率増加」とニュースでは毎日のように報道されていたが、今思い出してみると、あの頃のほうが今よりも断然景気がよかった気がする。

 5歳年下の妻と知り合ったのは、同僚とふらりと立ち寄った新宿のディスコだ。チークタイムでスローな曲になったとき、一緒にいた同僚が隣にいた女性グループに声をかけた。そこに今の妻がいた。

 その時に「一緒に踊ろう」とは恥ずかしくて誘えなかった。しかし、その日はたまたま帰る方向が同じだったので駅に急いだ。2人で階段を駆け上がるとホームから終電が出たあとだった。仕方ないのでトースト食べ放題が売りの24時間営業の喫茶店に入り、朝まで話しこんだ。