発注者がシステム開発をリードする時代に入った

昨今では、企業や組織のIT化が、その会社独自のビジネスモデルや業務プロセスに深く関わってくるようになりました。

インターネット通信販売のビジネスモデルを実現したシステム構想や要件は、外部のベンダでは思いつなかったでしょう。IoTを利用した製品流通のシステム、AIを駆使した工場の建設、欧米ではすっかり定着したタクシーの配車システムなども、その業種の人がリードしなければ絶対にできないものだったでしょう。もしかすると、システムを実現するために必要な技術についても、発注者企業のほうが正しく取捨選択できるかもしれません。

つまり、システム開発プロジェクトは、発注者が構想し、リードする時代に入ったのです。

「ITのことはわからないから、ベンダさんの仰せのままに」などと言っていたら、時代に取り残されて経営自体が危うくなってしまう、そんな時代に入ったと言えるでしょう。

発注者企業のみなさまは、ぜひ、本書を自社のシステム開発の参考にしていただきたいと思いますし、もしあなたがベンダーサイドの方だったとすれば、ユーザーとの付き合い方や、どのようにユーザーをリードするべきか、考察を深める機会にしていただければ幸いです。

(本記事は、『システムを「外注」するときに読む本』の「はじめに」を抜粋して掲載しています)

細川義洋(Yoshihiro Hosokawa)
経済産業省CIO補佐官。ITプロセスコンサルタント。立教大学経済学部経済学科卒。元・東京地方裁判所民事調停委員・IT専門委員、東京高等裁判所IT専門委員。大学卒業後、NECソフト株式会社(現NECソリューションイノベータ株式会社)にて金融機関の勘定系システム開発など多くのITプロジェクトに携わる。その後、日本アイ・ビー・エム株式会社にて、システム開発・運用の品質向上を中心に、多くのITベンダと発注者企業に対するプロセス改善とプロジェクトマネジメントのコンサルティング業務を担当。独立後は、プロセス改善やIT紛争の防止に向けたコンサルティングを行なう一方、ITトラブルが法的紛争となった事件の和解調停や裁判の補助を担当する。
これまで関わったプロジェクトは70以上。調停委員時代、トラブルを裁判に発展させず解決に導いた確率は9割を超える。システム開発に潜む地雷を知り尽くした「トラブル解決請負人」。2016年より経済産業省の政府CIO補佐官に抜擢され、政府系機関システムのアドバイザー業務に携わる。著書に『システムを「外注」するときに読む本』(ダイヤモンド社)、『なぜ、システム開発は必ずモメるのか!』『モメないプロジェクト管理77の鉄則』(ともに日本実業出版社)、『プロジェクトの失敗はだれのせい?』『成功するシステム開発は裁判に学べ!』(ともに技術評論社)などがある。