用語を覚えることが本質ではないので、社内からの質問には「一旦受け止めること」など、なるべく平易な言葉で説明するようにしています。しかし、それでもすぐにしっくりくる人は多くありません。以下は、承認が苦手だというAさんからの相談です。

相談者のAさん(以降「A」): 「私は、部下を承認することが苦手なんです」

聞き手(以降「聞」): 「承認が苦手? どんなときにそう感じられるんですか?」

Aさん:「たとえば、部下がお客様への提案書を作成しているとき、事前チェックをすることがあります」

聞:「ドラフトのチェックですね」

A:「はい。一生懸命取り組んでいることは伝わってきますし、ちゃんとできているとは思うのですが、上手く褒められないんです」

聞:「なるほど。Aさんとしては褒めたいわけですか」

A:「そうですね。私としては努力は労いたいですし、それで『うん、ここのところはいいね』などと言ってみるのですが、どうしてもわざとらしいというか…」

聞:「言い方がわざとらしくなってしまう?」

A:「…というか、正直に言えば普通の出来栄えというか、褒めるほどの内容じゃないことが多い…」

聞:「ああ、つまり、とりたてて褒めるほど素晴らしいとは思ってないということですか」

A:「まぁそうですね。そんなときにでも、褒めないといけないのでしょうか?」

 よくよく話を聞いてみると「褒めることがうまくできない」ということのようです。

「承認する」ことを「褒める」ことと混同しているケースです。実は、これは意外と少なくありません。「いいね!」と褒めることが、いつの間にか承認と同義になってしまう傾向があるようです。

 ここでハッキリしておいたほうがよいことがあります。 承認は褒めることとイコールではないということです。