B:「前回の商談のとき、できるだけ多くの判断材料が欲しいと先方から言われたので」

A:「そうでしたか。だから詰め込んじゃったんですね。理由が理解できました。だだ、今回の趣旨に照らすとどうですかね」(※2)

B:「確かに、前回とは状況が異なるので、シンプルなほうがよいかもしれません」

A:「さっきまでの不安そうな表情はなくなりましたね。自信が出てきたんじゃないですか」(※3)

B:「はい。修正ポイントが明らかになったので気持ちが少し楽になりました。ありがとうございます」

 上司であるAさんが、一応合格水準に達しているドラフトにフィードバックを行ったケースです。まず、良い悪いには言及していません。取り立てて褒めるほどのレベルではないからです。しかし、少なくとも3つのポイントについて承認しています。

1.Bさんの現在の実力に照らせば十分な努力が認められることを伝えたこと(※1)
2.Aさんから示唆を与えるよりも先に、Bさんの進め方の意図を確認したこと(※2)
3.Bさんが再考する様子を見ていて気がついた表情の変化をフィードバックしたこと(※3)

 繰り返しますが、これらはいずれも褒めてはいません。しかし、いずれもBさんをモチベートする行為になっています。

 上では「一旦受け止めること」と表現しましたが、さらに一歩進めると、受け止めたことを相手にもわかるように示すこと、つまり「観察して得られた事実を言葉にして伝えること」だと言い換えることもできます。