そんなある日。ひとりのクラスメートが私の持ち物を見てこう言いました。

「I like your pencil case!Cool!」(あなたの筆箱いいね! かっこいい!)

 それは日本から持って来た、いろいろなところが飛び出したりスライドしたりする多機能式筆箱でした。「サ、サンキューベリーマッチ!!」

 私の筆箱は数人のクラスメートにあちこち触られまくることになったのですが、これをきっかけに、クラスメートと言葉を交わすことが増えていきました。

「アイ・ライク・ユア・◯◯」は、話のきっかけとしてとても便利な魔法の言葉です。この場合の「ライク」は、日本語では「いいね!」というような意味でしょうか。シャツの色や使いやすそうなペンなど、ちょっとしたことでいいのです。大切なのは「それ、いいですね!」の気持ちを声に出すこと。なぜならそれは、「私はあなたに関心がありますよ」という意思表示だからです。

「正面切って人を褒めるのはちょっと……」というシャイな人は、『笑っていいとも!』で32年にわたってゲストを迎え続けた名司会者、タモリさんのセリフを思い出しましょう。

「髪切った?」

 たったこれだけの言葉で、「あなたに関心がありますよ」ということを示しています。たとえ「切っていません」という答えが返って来ても、さらに勢いをつけてもう一歩踏み出してみる。

「そうですか、でもいつもと感じが違って見えたので。なんでかな」
「私、切ろうと思っているのになかなか時間がなくて」

 こんなふうに、髪の話題を起点にして、会話を続けていくことができます。これぞ日本語版の「I like your hair」構文!

 思春期の私がクラスに溶け込むきっかけをくれた言葉を、タモリさんは日々、緊張しているであろうゲストに投げかけていたのですね。やはりタモリさんは偉大な方です。

 人に会ったらまず、相手の「いいね!」を探すこと。そして、それを口に出すこと。会話の基本は洋の東西を問わないのです。

dot.より転載