住宅業界で今年注目されている「スマートハウス」をご存じだろうか? これはIT(情報技術)を駆使して、太陽光発電、蓄電池、家電、住宅機器などをコントロールし、家庭内のエネルギー消費を最適に保つ住宅のことだ。

積水ハウスが提唱する「スマートエネルギーハウス」。電力だけでなく、温水や通信も効率的に制御し、省エネと居住快適性の双方を追求している。

 今年2011年がターニングポイントとなる理由は、スマートハウスの鍵となる「住宅用蓄電池システム」が春に発売されたからだ。パナソニックや東芝が予定を前倒しして開発・発売に漕ぎ着けたため、スマートハウスが実用化され、市場に投入できるようになったのだ。これにより、家庭の太陽光発電器で作った電力を、夜間や雨天時など必要なときに消費することも可能となる。

 そしてもちろん、先の震災で電力不足が全国的な重要課題になっていることも忘れてはならない。これまで“安全圏”とされていた関西地方においても、いよいよ本格的に節電が義務付けられ、「スマートハウス」は全国規模で熱く注目されることになったのだ。

 省エネ住宅の開発・販売には、もともと大手住宅メーカーが中心となって注力してきた経緯がある。その背景にあったのは、少子高齢化による新設着工戸数の低迷であり、各社とも「環境配慮」という付加価値を創出しようとした。

 そして思惑通り、これに対する反響は大きいものであった。大京は首都圏初となる太陽光発電仕様のマンションを作り、全て完売。積水ハウスも太陽電池を屋根に装備した住宅が、同社の売り上げの半分以上を占めるようになった。

 このような素地もあり、さらに普及が期待されるスマートハウスだが、その基本となるシステムが、「ホーム・エネルギー・マネジメントシステム」(HEMS)と呼ばれるものだ。ITを通じて、省エネ以外にも情報サービスやショッピングなどが提供される。開発においては、住宅メーカーに加え、家電メーカー、電力会社、ガス会社などが連携を加速化させている状況もある。

 電力の安定供給を生む新たな鍵となるのが、「次世代型電力送電網」と呼ばれる「スマートグリッド」だ。この基盤がきちんと確立されることが急務となっている。しかし、スマートハウスが真の意味で広く普及するためには、快適さや使い勝手の良さ、そして適正な価格といった条件が揃うことが必要になるのは言うまでもない。

 エネルギー対策が国家的課題となっている今、「スマートハウス」の持つ意義も大きいだろう。世界トップクラスの水準を誇る日本の住宅メーカーや電機メーカーらが、スクラムを組んで国内外に発信できれば、復興への大きな足がかりの1つになるのではないだろうか。

(田島 薫/5時から作家塾(R)