サバ料理専門店を倒産危機から救ったクラウドファンディングトロサバ寿司一本で事業を起こし、人気店に成長したサバ料理専門店「SABAR」を立ち上げた右田孝宣社長 Photo by Hatsuyo Hashinaga

トロサバ寿司一本で事業を起こし、1号店開設からわずか3年で国内外に13店舗を展開するまでに成長した人気サバ料理専門店「SABAR」(「人気のサバ料理専門店は、社長がサバ嫌いだったから生まれた」参照)。ユニークなPR戦略とブランディングで事業拡大してきた右田孝宣社長だったが、サバに特化した製造販売事業は予想以上に効率が悪かった。創業から6年目には倒産の危機に直面。このとき、突破口を拓いたのが、ネットを通じて少額投資を募る「クラウドファンディング」だった。(フリーライター 橋長初代)

非効率で無理なビジネスと
ワンマン経営が招いた「天国と地獄」

 念願の阪急百貨店うめだ本店に、トロサバ寿司の販売店「鯖や」をオープンした2012年秋。右田社長は経営者として初めての試練を味わうことになる。資金繰りが悪化し、月500万円ほどの人件費を捻出できない状況に追い込まれていたのだ。

「2013年2月に預金残高がとうとう1万5002円になったんです。それで資金繰りのために、預金を全て下ろし、生命保険もすべて解約しました。その上で、役員報酬も止めて、2~3ヵ月は持ちこたえるところまでなんとかしました。税理士からは、金融機関に対しリスケを要請しようと提案されましたが、たとえ苦しくてもそれだけは避けたかった。世の中から必要とされない企業なら潰れた方がいいし、必要とされるなら必ず生かされる。そう信じて、リスケせずに乗り切ると言いました」