週3日は自店のサバ料理を食べ歩くという、自他共に認める「サバ博士」がいる。もともとはサバ嫌いだったが、誰でも食べられる酸っぱくない「サバ寿司」を考案。それが評判となり、サバだけを素材に製造販売するビジネスを立ち上げた。飛躍のきっかけは、クラウドファンディングで開業資金を調達したサバ料理専門店「SABAR」。1号店開設からわずか3年で13店舗に拡大し、右肩上がりで業績を伸ばしている。会社の名前は「鯖や」。創業者である右田孝宣社長に、そのユニークな戦略と波乱に富んだ人生を3回シリーズで聞いた。(フリーライター 橋長初代)
サバ嫌いだから生まれた
“酸っぱくない”シメサバ
サバ寿司製造販売会社「鯖や」の右田社長は今年43歳。売り物であるトロサバのように、男としても経営者としても脂が乗った年頃だ。
取材当日は、青く光るサバ色のスタッフジャンパーで登場。仕事場では滅多にスーツは着ないらしい。ちなみに、持参したペンケースもサバのデザイン。「これからサバをモチーフにしたオリジナルグッズも作っていきたいんですよ」と、満面の笑みを見せる。
ジャンパーの背中には、右田社長の思いが伝わるこんな言葉が書かれていた。
「トロサバボウズシがフジヤマ・ゲイシャ・カラオケに次ぐ世界共通語になるその日まで私達は鯖寿司に情熱をそそぎつづけます」
トロサバとは、真さばの中でも脂質含量が21%以上の旬のサバのこと。鯖やでは、脂肪含量23%、魚体650グラムの「青森八戸前沖さば」を使用している。そもそも“トロサバ”というジャンル自体なかったが、わかりやすく売り出すために定義したそうだ。
それにしても、なぜサバだったのだろうか。日本人が一番好きなマグロの専門店ならよくあるが、マグロでも鮭でもなく、サバに絞り込んだ理由はなんなのか。右田社長は言う。