インバウンド観光客の“爆買い”需要が去り、減収減益に陥った百貨店各社。本業を支えるための多角化を模索する中、高島屋は不動産事業とシンガポールの店舗で地歩を固めつつある。(「週刊ダイヤモンド」編集部 岡田 悟)
スポーツウエアやアロマの販売、発酵食品のデリカテッセンやカフェ──。新宿タカシマヤ8階のフロアの一部約2000平方メートルが今年3月「ウェルビーフィールド」としてオープンした。
「美」と「健康」をテーマにした売り場で、フィットネスジムを併設し、ヨガ教室も開催する。近年流行している、日常的にヨガやランニングといったスポーツを楽しむ「アスレジャー」(アスレチックとレジャーの造語)と呼ばれる習慣をテーマに、いわゆる「コト消費」に合わせた商品の購入を狙ったものだ。ターゲット層は年齢・性別を問わないとしているが、売り場では実際、タウンユースにも使えそうな女性向けのおしゃれなスポーツウエアが目立つ。
長年、構造的な販売不振が指摘される百貨店業界。比較的堅調とされる高島屋も図(1)のように、2017年2月期の連結業績は昨年度からわずかに減収減益となった。
とりわけ本業の百貨店事業は厳しい。図(2)のように、主力である婦人服の販売減が、大きな要因とされる。
一方で化粧品は、女性客の継続的な購入が見込める上、数年前は高額のブランド品や宝飾品を買っていた、中国人を中心としたインバウンド観光客の「お目当て」が、現在は化粧品へと移っているため好調だ。
つまり、百貨店の営業収益がわずかな減少で済んでいるのは、婦人服、紳士服の販売の落ち込みを、インバウンドの化粧品需要で補っているからなのだ。