迷走を続ける政治、進まない東日本大震災の復興、そして足もとで再び経済を覆い始めた暗雲――。現在日本は、試練のときを迎えている。国としての求心力が失われつつある今、我々は何を目指して歩いていけばよいのか。長い政治人生の中で、日本という「国家」のあり方について提言を続けて来た石原慎太郎・東京都知事が、日本人が取り戻すべき気概とこれから進むべき道について、思いの丈を語る。読者諸氏は何を感じるだろうか。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 原英次郎、小尾拓也、撮影/宇佐見利明)

日本の国家そのものが衰弱している
「我欲」に満ちた日本人は復活できるか

――迷走を続ける政治、進まない東日本大震災の復興、そして足もとで再び経済を覆い始めた暗雲と、現在の日本は多くの試練に直面しています。激動の時代において、日本人の価値観は次第に変わり、国家としての求心力が失われつつあるように感じられます。石原都知事は、現在の日本の状況をどう見ていますか。

石原慎太郎・東京都知事 独占インタビュー<br />「今こそ問い直すべき日本という国家の在り方。<br />国を衰弱させる“我欲”を捨て、復活への道を探れ」いしはら・しんたろう/東京都知事(第14・15・16・17代)。1932年生まれ。兵庫県出身。一橋大学卒。68年参議院議員通常選挙に自民党から出馬し、初当選。72年から95年まで衆議院議員を勤め、自民党で環境庁長官、運輸大臣を歴任。99年東京都知事選に出馬して当選。以後連続4期当選。都知事としては、排出量取引制度導入、ディーゼル車排ガス規制における硫黄除去装置導入、新銀行東京設立、首都大学東京開学、外形標準課税導入、全国初の複式簿記・発生主義会計の導入、3万人規模の国際的な大会である東京マラソンの創設、東京五輪誘致活動など、全国に先駆けた数々の政策を行なう。芥川賞を受賞した『太陽の季節』をはじめ、『化石の森』『「NO」と言える日本-新日米関係の方策-』(共著)『弟』『新・堕落論――我欲と天罰』など、著書多数。Photo by Toshiaki Usami

 私は、日本最大の自治体の首長であると同時に、1人の日本国民です。大震災で被災した他の自治体への協力など、東京都知事としての目線から考えるべきことはありますが、基本的にはいつも「国家」を背景に物事を考えています。

 私はこの頃、日本という国家そのものが衰弱してきているように思えて仕方がない。何故こんな国になってしまったのか。それは、戦後66年間、米国の傘の下でよくわからない「平和」を享受しながら、何も考えずにやってきたことのツケが回ってきているのだと思います。

 米国は自由、フランスは自由、平等、博愛という国家思想を持っていますが、今の日本人が持っているのは「我欲」だけ。金銭欲、物欲、性欲です。

 最近ショックを受けたのは、30年前に死んでミイラ化していた高齢者が東京都で見つかった事件。家族が葬式も出さずに遺体を放置したまま、あたかも本人が生きているかのように装って、年金をもらい続けていた。

 ああいうことをする国民は、世界を見回しても日本人しかいません。象だって、仲間が死んだら鼻で死体を触って弔いをするのに、これでは畜生以下の行為と言わざるを得ません。