中国の地方政府債務のデフォルト(債務不履行)リスクが高まっている。2008年のリーマンショック以降も経済成長を持続すべく、採算度外視でインフラ投資を続けてきたためだ。その過程で地方政府は「LGFV」なる“隠れ債務”をふくらませており、実態がつかめないことから中国内外を問わず動揺が広がっている。
今年4月、中国の大手商業銀行6行の元にひっそりと届いた1通の文書が、各行の幹部らに大きな衝撃を与えた。
「本日をもちまして、弊社は元本返済の見込みが立たなくなりました。利息のみ返済を続けます」
文書の送り主は、中国内陸部・雲南省の政府系投資会社、雲南省公路開発投資(雲南公路)。大手国有銀行など13行から計270億元(約3240億円)の融資枠を確保し、すでに100億元以上も借り入れて高速道路の開発を進めてきた政府系企業である。それほどの巨額資金を突っ込んだ先がデフォルトに陥るというから、銀行団が焦ったのも無理はない。
「こんな文書は受け取れない」
中国工商銀行や中国建設銀行の幹部はこれを断固阻止すべく、あわてて雲南省に飛び返済を迫った。
連日の粘り強い説得が奏功し、雲南省政府の幹部も交渉の席に引きずり出した。はたして省政府は雲南公路への3億元の資本注入と20億元の融資を渋々承諾、危機はひとまず回避された。
ところが、である。銀行側が省政府の保証を得て安心したのもつかの間、7月19日、今度は雲南省政府系最大のインフラ投資会社、雲南省投資控股集団(雲投集団)の発行する債券が投げ売りされ、価格が大暴落したのだ。