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莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見

県の境目を打ち破って観光客を誘致する
岡山の旅行会社

莫 邦富 [作家・ジャーナリスト]
【第68回】 2011年9月1日
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 先日、観光関連の取材で岡山県を訪れた。地元での受け入れ窓口は両備ツアーズという会社だった。いつものようにスケジュールに追われていた私は、東京を出る前日深夜になってようやく訪問先と日程をチェックした。

 津山、湯郷温泉、岡山桃茂実苑、倉敷、直島、児島……となっていた。

 これまで講演などで何度も岡山県を訪問していたので、同県の地名はそれなりに頭に入っている。その大体の位置もおぼろげに描ける。ところが、その直島は知らない。見学内容などを見ると、地中美術館、ベネッセハウスミュージアム、家プロジェクトなどとなっている。なおさら見当がつかなくなってしまった。

 Googleで何気なくその直島を調べてみて、一瞬自分の目を疑いたくなった。瀬戸内海上に浮かぶ直島は香川県香川郡に属する町と書かれているのだ。思わず秘書が用意してくれたスケジュール表を読みなおした。確かに岡山県の取材だと明記されている。しかし、訪問先には香川県に属する直島が入っているのだ。

 眠気で頭もよく回らず、事情をまったく飲み込むことができなかった。いや、飲み込むことができないというよりも、キツネにつままれたような心境だった。その心境のまま翌朝の飛行機に乗り込み、岡山空港に飛んだ。

 両備ツアーズの関係者に温かく出迎えられ、車で津山に赴いた。そこで私は早速質問した。今度は岡山に対する取材訪問なのに、なぜ香川県の直島を訪問先に入れたのだろうか、と。両備ツアーズ関係者の回答は非常にシンプルなものだった。

 「直島は香川県に属していますが、距離的に見れば岡山県に近い。フェリーで移動しても20分間くらいでついてしまいます。だから、私たちはお客さんに直島を紹介しています」

 わかりやすく言えば、ビジネスになるから、目に見えない県の境界線にはこだわらずに香川県の直島を観光商品として推薦しているのだ。それがわかって思わず拍手した。そして、1年前に経験したある出来事を思い出した。

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莫邦富(モー・バンフ) [作家・ジャーナリスト]

1953年、上海市生まれ。85年に来日。『蛇頭』、『「中国全省を読む」事典』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーに。そのほかにも『日中はなぜわかり合えないのか』、『これは私が愛した日本なのか』、『新華僑』、『鯛と羊』など著書多数。


莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見

地方都市の勃興、ものづくりの精度向上、環境や社会貢献への関心の高まり…中国は今大きく変わりつつある。先入観を引きずったままだと、日本企業はどんどん中国市場から脱落しかねない。色眼鏡を外し、中国ビジネスの変化に改めて目を凝らす必要がある。道案内人は日中を行き来する中国人作家・ジャーナリストの莫邦富氏。日本ではあまり報道されない「今は小さくとも大きな潮流となりうる」新発見を毎週お届けしよう。

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