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ソブリン危機――歴史的難局の選択肢

財政・金融政策は円高、経済危機の特効薬ではない
日本が学ぶべき「欧州・アメリカ財政危機の教訓」
――東京大学大学院経済学研究科・福田慎一教授

【第11回】 2011年9月2日
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東日本大震災、GDP比200%もの巨額な財政赤字という深刻な事態に襲われている日本。にもかかわらず、円(対ドル)は史上最高値圏の76円前後をさまよい続け、円高が慢性化している。その背景にあるのが、欧州とアメリカの経済・財政危機だ。これらは、震災からの復興に向けて動き出した日本経済に水を差しかねない問題だが、先進国で最も多額の財政赤字を抱える日本にとって、実はそこから学ぶべき点も非常に多い。さらに新たに発足する野田佳彦政権下では、財政健全化に一層注目が集まっている状況だ。そこで、東京大学大学院経済学研究科の福田慎一教授に、欧米経済の悪化や円高が今後の日本経済に与える短期・長期的影響と、日本も財政危機に陥らないため早急に学ぶべき「欧州・アメリカの教訓」を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 林恭子)

日本の復興に水を差す欧米の経済危機問題
特に懸念すべきは「欧州の間接的影響」

――東日本大震災からの復旧・復興へ向けて動き出した日本だが、欧州やアメリカの財政危機問題で慢性的な円高状態に陥っている。今後の欧米経済の行方とそれに伴う日本経済の見通しを教えていただきたい。 

ふくだ・しんいち/東京大学大学院経済学研究科教授 1960年生まれ。東京大学経済学部卒業、米イェール大学大学院博士課程修了。経済学博士。横浜国立大学助教授、一橋大学助教授、東京大学助教授を経て、2001年より現職。専門は金融論、マクロ経済学、国際金融。09年日本経済学会・石川賞受賞。主な著書に『マクロ経済学・入門』(共著、有斐閣、96年)。
Photo by Masato Kato

 3月11日の震災により、日本はサプライチェーンの崩壊をはじめとした大きな経済的ショックに襲われた。しかし現在は、サプライチェーンも回復し、復旧・復興需要によって景気もよい方向へ向かっている。

 その一方で非常に厳しいのが、質問にあったように経済危機下にある欧州やアメリカだ。また、新興国でもインフレが顕在化しており、あまり良い状況とはいえない。こうした外的要因は、確かに勢いづいていた復旧・復興に伴う景気回復に水を差す可能性がある。今年の日本は、プラス成長ができるかどうか、極めて厳しい状況になるだろう。

 ただ、その要因の1つであるアメリカ経済に対して、私は個人的に楽観的な見方をしている。確かに9.11後に軍事費が膨らみ、さらにリーマンショック対策で財政赤字は拡大した。QE2(量的金融緩和第二弾)や財政政策によって株価は回復したものの、同国の雇用環境や住宅市場の回復は非常に限定的だ。そういう点からも、予想ほど経済が回復していないのは事実である。

 しかし、ここ10~20年ほどアメリカ経済を牽引してきたIT産業は依然として好調であり、同国が先進主要国のなかで最も高い経済成長を達成していることに変わりはない。今年のアメリカの経済成長率も、当初予想されていた3%超は難しいとはいえ、2%は実現可能だと見ている。もちろん過度に楽観視すべきではないが、あまりに悲観しすぎるべきでもないだろう。

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