「Japanisation」とは
7月以降、急速に海外のメディアで「Japanisation」(日本化現象)という概念が話題になった。実は、ちょうど1年前にも、類似した概念が市場で話題になり、筆者はこの1年あまり、ストーリーラインとしてこの用語を用いることも多かった。
実際に、筆者が昨年発表した著作『世界国債暴落』 のサブタイトルは、「世界を蝕む日本化現象」とした。昨年、夏にかけて米国では一部にデフレ不安が生じ、2010年11月に行なわれたFRBのQE2は、まさにデフレを回避させるためのものだった。
実際に、QE2に伴う株価の大幅な回復、さらに原油価格上昇に転じたことで、逆にインフレ懸念も生じた。その結果、2011年初にはデフレや「Japanisation」とういう概念はほとんど目にされない言葉になっていた。
それが再び、亡霊のように市場の話題に浮上したのが、7月以降である。以下のように、欧米の有力メディアがそろって「日本化」を取り上げるようになった頻度は、昨年以上の状況である(図表1参照)。
今年、改めて「日本化」の言葉が用いられるようになったのは、欧米市場での先行き見通しが大幅に下方修正されたことが大きい。7月以降、米国においては債務上限問題が政治問題化し、さらに8月にはS&P社が米国国債を格下げするに至った。
加えて、2012年の大統領選挙を展望し、オバマ大統領の批判勢力である共和党の戦略としても、「Tea Party」の動きに示されるように、財政緊縮バイアスを強めて景気の足を引っ張ることを戦術にしやすい。
みずほ総合研究所は、8月に発表した2011年と2012年の米国の成長率見通しを、それぞれ+1.6%(前回+2.5%)と1.4%(前回+2.1%)に大きく下方修正させた。その主因は、底流にバランスシート調整が続く中、財政緊縮が制度化・政治化して加わることを重視したことにある。