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金融マーケティングの何に気をつけたらいいか

山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]
【第197回】 2011年9月7日
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退職金全額で毎月分配型ファンド

 先日、放送関係の仕事をしている知人から、知人の母上の資産運用について相談を受けた。この方のお母さんは、長年仕事を持って働いていたが、今年の初めに退職した。彼女は、給与振り込み口座のあった大手信託銀行で、退職金の運用を開始したが、退職金のほぼ全額を一本の投資信託で運用して、現在損をしているという。調べてみると、米国のハイイールド債に投資して、さらに米ドルの為替リスクをブラジルレアルにスイッチして、高い分配金を出す(現在、一口あたり毎月150円)タイプの商品で、分配金は高いものの、基準価額が下落しており、現在、数百万円の含み損を抱えているという。

 米国のハイイールド債自体が株価指数ほどではないとしてもそれなりのリスクを持っているが、加えて、ブラジルレアルと円の為替レートは、それ単独で、TOPIX(東証株価指数)や米国のS&P500といった先進国の代表的な株価指数よりも大きいくらいのリスクを持っている。

 もちろん、退職金以外の資産の額や状態にもよるだろうが、通常の家計で、高齢者が退職金を全てこのようなハイリスクの商品で運用することは、不適当だ。このケースでは、ファンドの販売に際して、信託銀行の担当者が、そもそも投資家に適合する商品を勧めていたのか、あるいは、十分なリスクの説明をしたのかについて、争う余地があるかもしれないが、先ずは、投資家の側でこのような失敗をしないように気をつける必要がある。

 知人には、お母様に以下のように伝えるようアドバイスした。
(1)この商品は退職金の運用にはふさわしくないので、早く解約すること。
(2)解約に際しては、買値との差にこだわらずに、現実を認めること。
(3)この信託銀行は悪質なので、解約によって得たお金は、他の銀行の口座に移すこと。
(4)当面、一番やってはいけないことは、新たな投資商品に投資し直して、「損を取り返そう」とすること。
(5)退職金の運用計画は、しばらく頭を冷やしてから、改めて一から考え直して作ること。その際には、金融商品を買う可能性がある相手に相談してはいけない(必要があれば、私が作り方をアドバイスします)。

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山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]

58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役。


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