9月に世界的な経済・金融危機が予想される理由

 経済、とくに金融の分野は、机上の理論的な分析だけでは不十分で、金融市場取引の現場を経験していないと分からない部分が多い。分析予想をするときには、そうした現場の知識も踏まえ、様々な情報を組み合わせて積み上げていく必要がある。

 そういった観点から見ても、この9月は経済・金融危機が発生する可能性がある。今年の世界経済は米国と中国が牽引してきたといっても過言ではないが、その2つの国の経済の転換点になりそうなのが9月なのである。

 2017年の世界経済の課題については、本連載『2017年の世界経済はこの「4大課題」に左右される』にも書いたが、トランプノミクスの実現(米国)、EU離脱の行方(英国)、黄信号の経済(中国)、限界の金融政策(日本)の4つがある。その中で、今回は米国、中国、日本について、さらに解説する。

 中国経済については、本連載『中国経済は9月以降が危ない』に詳しく書いたのでご参照願いたいが、要は、中国は現在、5年に一度の共産党大会のために、かなり“無理な”経済安定化政策を採用している。党大会で人事が終わったら、その無理な経済安定化政策を転換する可能性が高いからである。

米「債務上限」が今年も9月末に

 米国経済については、9月“末”が一つの山だ。米国の連邦予算は10月から新年度に入るが、米国は財政赤字に関しては日本とは違い、“法律で”連邦債務(国債発行額)上限を規定している。そのため9月末までに上限を上げる法案を通さなければならない。以前は「財政の崖」ともいっていたが、米国はこの法案が通らないと補正予算などは立てずに、官庁を閉めてしまう。