パイロット不足「2030年問題」が10年前倒しで顕在化する理由パイロット不足問題が顕在化したことで、産学官の新しい取り組みも始まっている Photo by Ryosuke Shimizu

 航空業界でパイロットが不足する「2030年問題」は、「2020年問題」に前倒しされた。今そこにある危機となったのだ。

 16年8月、国土交通省は不足に対応するため、パイロットを養成する航空大学校の18年度からの入学者を現在の約1.5倍となる108人程度に増やすと発表した。

 もともと、航空業界内では「2030年問題」が危惧されていた。原因は、LCCの台頭、観光客数の増加、航空機の小型化や中型化などにより、世界中でパイロット需要が飛躍的に増していることだ。

 国内では、パイロットの高齢化も一因だ。国土交通省によれば、国内のパイロットの年齢構成は40代後半に偏っている。彼らが大量に退職するのが30年なのだ。

 パイロットの養成は民間航空会社、航空大学校に任されてきた。近年、そこに私立大学が加わった。ANAホールディングスが、06年に東海大学と産学連携し、国内で初のパイロット養成コースを開設。10年以降、ANA全体で80人以上の卒業生を、自社養成の採用とは別枠で採用してきた。

 現在の体制ではパイロット養成は年間で300人ほどが限界だが、30年には400人規模の新規パイロットの採用が必要になる。