ビジネスの世界にも通じる「悪いファインプレー」と「良いエラー」とは?

拙著、『知性を磨く』(光文社新書)では、21世紀には、「思想」「ビジョン」「志」「戦略」「戦術」「技術」「人間力」という7つのレベルの知性を垂直統合した人材が、「21世紀の変革リーダー」として活躍することを述べた。この第28回の講義では、「技術」に焦点を当て、拙著、『意思決定 12の心得』(PHP文庫)において述べたテーマを取り上げよう。

悪いファインプレー

 これまで、「意思決定」の力を身につけるために必要な「直観力」「説得力」「責任力」という「3つの能力」について述べてきたが、今回は、これらのうち、「責任力」について述べよう。

 この「責任力」とは、究極、「リスクを取る能力」のことであるが、この能力を正しく発揮するためには、何よりも、「リスクをマネジメントする能力」を身につけなければならない。

 では、「リスクをマネジメントする能力」とは何か。

 その能力について説明するために、一つのエピソードを紹介しよう。

 プロ野球で西武監督を務めた広岡達朗氏が、テレビで解説者を務めていたときのことである。

 その試合中に、ある外野手が、大飛球を見事なダイビングキャッチでアウトにするという素晴らしいファインプレーをした。それは、素人目には、まったく素晴らしいファインプレーであり、アナウンサーも「素晴らしいファインプレーでしたね!」と広岡氏に相づちを求めた。

 しかし、解説者の広岡氏は、渋い表情でこう言った。

「あのファインプレーは、悪いファインプレーです。そもそも、あの選手は、この場面での守備位置が間違っている。だから、自分のいないところに球が飛んでくる。たまたま、ファインプレーになったから結果オーライですが、あれは、悪いファインプレーです」

「なるほど」と思いながら、さらにその試合をテレビで見ていると、今度は、ある内野手が、飛んでくる強いゴロを捕球できずにエラーをした。そのとき、アナウンサーからコメントを求められた広岡氏は、こう答えた。

「あのエラーは、しかたがない。あの場面で、あの選手の守備位置は正しかった。たまたま判定はエラーになりましたが、あの強いイレギュラー気味のゴロをとれなかったのはしかたがないでしょう。あれは、良いエラーです」