朝晩に秋の気配を感じるこの季節、日中の残暑との気温差によって実が締まり、茄子が美味しくなります。

 夏が旬である茄子が、わざわざ「秋茄子」と呼ばれて別格に扱われるのはこういうわけです。

 身体を冷やす効果の高い夏野菜の中でも、90%以上が水分でできている茄子は、特に解熱効果が高く、暑い日にお勧めです。

“嫁に食わすな”とまで言われた「秋茄子」は、<br />旨みがギュッと詰まった健康野菜茶筅茄子《ちゃせんなす》(『料理調菜四季献立集』より)
【材料】/小ぶりの茄子…5本/揚げ油…適量/だし…1/2カップ(100ml)/砂糖…大さじ1/醤油…大さじ1.5/鷹の爪…1本/青紫蘇…3枚
【作り方】①茄子は軸をつけたままヘタを落とし、縦に10本前後切り込みを入れる。②1を箸で挟んでフニャっとなるまで素揚げし、ざるに乗せてたっぷりの熱湯を注ぎ、油抜きをする。③油を切った茄子をひねって茶筅の形に整え、鍋に並べて、だし、砂糖、醤油、種を抜いて小口切りにした鷹の爪、大きめに刻んだ青紫蘇を入れて中火でコトコトと煮含める。汁気が半分以下になったら火を止める。
※冷めても冷やしても美味しくいただけます

「嫁に食わすな」は
やはり嫁いびりの意味か

「秋茄子は嫁に食わすな」という江戸時代にできた言葉がありますが、これを秋茄子の美味しさに着目した“嫁いびり”の言葉とするか、身体を冷やす効果を心配した“嫁孝行”の言葉とするか、これほど解釈が両極端な言葉も珍しいのではないでしょうか。

 進んで決着をつける必要はないのかも知れませんが、私が思うに、これは前者が正解で、後者は後の世の人のフォローです(笑)。なぜなら…

・秋茄子の解熱効果ぐらいで、身体を悪くするなど大げさすぎる。

・狂歌好きで皮肉屋の江戸っ子が、わざわざ嫁にいたわりの言葉を残すとは思えない。しかも、当時の“嫁”は現代人が想像するよりはるかに強く逞しく、しおらしくて庇いたくなる存在ではなかった。

(余談ですが、「しおらしい」の意外な語源をご存知でしょうか? 昔、山間の百姓家では十分な塩が手に入りませんでした。そこで女房が、塩を持っていそうな行商人に言い寄り、身体と引き換えに塩を手に入れていました。素人ゆえに、その迫り方はぎこちなく、「この女はどうも塩が欲しいらしい」が「しおらしい」という言葉になり、今では可憐で従順な女性を指すようになったそうです。同じ女性としては、なんだか切ないですね)

・「嫁に食わすな」シリーズは他にもあり、秋鯖、秋かます、秋の鮗《このしろ》、五月蕨《わらび》など、いずれもおいしいものを指している。

 …といった理由からです。