5年以上引きこもる人でも
半年で8割以上が外に出てくる
「ひきこもり専門外来」を開設し、驚異の回復支援プログラムで知られる医師がいる。和歌山県美浜町の古民家を改修した「プチ家出の家」を拠点にNPOを設立し、活動を全国に拡充させる。
NPOを設立するのは、和歌山大学名誉教授で紀の川病院副院長兼ひきこもりセンター長の宮西照夫さん(68歳)と、「ひきこもり回復支援プログラム」などを利用して元気になった経験者たち。
宮西さんは、「平均6年以上引きこもる人も半年以内に84%が外に出てくる」という同プログラムの報告で注目されてきた「ひきこもり専門外来医」の先駆者だ。このプログラムでは、精神科医、臨床心理士、精神保健福祉士、メンタルサポーター(引きこもり経験がある当事者)による「ひきこもり回復支援」の専門家集団を形成し、大学や病院などで様々な回復支援活動を展開してきた。
宮西さんは1982年から和歌山大学の保健管理センターで、引きこもる大学生を中心にアウトリーチを続けてきた。2002年には、20年にわたって蓄積された118人のデータを基に、「ひきこもり回復支援プログラム」という独自のソフトを開発。アウトリーチ先を大学周辺の地域にも広げていった。
しかし、長期化が進んでいく現状を何とか変えられないかと、2012年3月に大学を早期退官。同年4月から同病院で「ひきこもり専門外来」(※ホームページには記されていない)と「ひきこもり専門ショートケア」(集団療法、自助グループ)をスタートさせると、毎年100人以上の当事者が診療に訪れた。しかもその約6割は、県外から病院に訪ねてくるという。
ただ、病院だけではアウトリーチや自助グループに限界がある。そこで、ソーシャルスキルや人間関係を磨き上げるための場として、あるいは家庭内のトラブルから一時的に避難できるようにと、宮西さんは2015年10月、自宅として使っていた古い民家2軒を改修し、“ひきこもり研究所”の「ヴィダ・リブレ」と、宿泊も可能な「プチ家出の家」を開設した。