今、中国人を始めとした外国人観光客に辟易しはじめている日本だが、バブル期を振り返ってみれば、円高を背景に世界中に旅行をして蛮行を繰り返し、ハワイでは「もう来るな」と言われた時代だった。観光業のメリットとデメリットを、われわれはどう考えればいいのだろうか?(ノンフィクションライター 窪田順生)

外国では観光客狙いの事件も!
日本でも増える不満の声

 スペインのバルセロナやイタリアのヴェネチアなどで、相次いで「反観光」のデモが起きている。

かつて、バブル期には日本人観光客も世界で「バーバリアン(野蛮人)」と呼ばれ、ハワイでは自然破壊まで引き起こした。観光客によるデメリットを減らし、地域や住民にとってメリットを引き出すような方策を考えることが必要だ

 背景にあるのは、違法民泊への規制の遅れや、大規模ホテル計画によって家賃や物価の高騰が引き起こされたということが大きいが、憎悪のはけ口は、「観光客」にまで向けられている。

「旅行客排斥、南欧で拡大=暮らしに影響、住民悲鳴-経済支える観光業痛手」(時事ドットコムニュース8月16日)によると7月末、バルセロナで観光していたイギリス人を乗せたバスを突然、覆面をかぶった4人組が襲撃。タイヤを刃物で切り裂いて逃走したが、その際に窓にスプレーでこのような「犯行声明」を残したという。

「観光業は地域を殺す」

 暴力行為に訴えているのは許されることではないが、この主張には同意をするという方も多いかもしれない。外国人観光客が右肩上がりで増えている日本でも、いたるところで「外国人観光客なんかたくさん来ても迷惑なだけだ」という不満の声が上がっているからだ。

「超満員のバス、消えゆく情緒…急増する訪日客に京都苦悩」(朝日新聞2017年6月14日)なんて記事をマスコミも最近よく報じているので、ご存じの方も多いだろうが、大都市や観光地では、一部のマナーの悪い外国人観光客がゴミのポイ捨てをしたり、住民の生活空間へ勝手に立ち入ったりというトラブルが急増している。

 また、常にとにかく大量の観光客が地域にあふれ返っている状態なので騒々しいのはもちろんのこと、バスや電車など公共交通機関も常時混雑しているので、高齢者や病人、育児をする母親など弱い立場の人が使いづらいという「実害」も出てきている。

 観光客が落とすお金によって地域が活性化して、自治体への税収などが増えれば、まわりまわって住民にもプラスの効果がある、というのは頭では理解できるものの、それと引き換えに「暮らしやすさ」「穏やかな日常」が徐々に失われているのでは、という不安から「外国人観光客は来るな!」と憎悪をむきだしにする人も少なくない。