早いもので、もう師走。毎年この季節になると「歳末助けあい運動」が始まり、街のあちこちで募金活動を見かけたりする。欧米でも、クリスマスシーズンはチャリティが非常に盛り上がる。世界中の多くの人が、いい人になりたいという気分になる時期だといえる。それもあってか、日本でも昨年から「寄付月間」というものも設けられて、多くのNPOや企業などが賛同して、寄付啓発や促進活動を行なっている。
日本人は
思いやりのある国民ではない?
その一方で、「日本の“思いやり指数”は世界最低レベル」というショッキングな調査結果も発表されている。われわれ日本人は、自分たちの国を「おもてなし大国」だと信じているし、他人に対して「親切な国民」だとイメージしている人も多いだろう。実際、日本を訪れたことのある外国人の多くは、「日本人は親切」というイメージを持っているようだ。反日イメージの強い韓国人や中国人からも、そのような感想はよく聞く。しかし実態は、けっして思いやりのある国民ではないようだ。
イギリスの慈善団体「Charities Aid Foundation」(CAF)が発表している「世界寄付指数ランキング」では、世界140ヵ国中、日本はなんと114位である。ちなみにこの指数、2015年のランキングでは日本は102位。昨年よりさらに12ポイントも順位を下げたことになる。
ちなみに1位は3年連続でミャンマー。以下、アメリカ、ニュージーランド、カナダ、オーストラリア、イギリス、オランダ、スリランカ、アイルランド、マレーシアと続き、アフリカ勢ではケニアが11位。「幸福の国」ブータンは17位だ。また、日本より上位には、ウクライナ(106位)、ジンバブエ(108位)、チャド(111位)など。韓国は75位。中国は140位で最下位だ。
この寄付指数は、「直近1ヶ月の間で、以下のことを行なったかどうか」という質問に対する回答の割合からはじき出されている。それは次の3つだ。
1)助けを必要としている外国人や見知らぬ他人などに対してなにか助けたことがあるか?
2)寄付をしたか?
3)ボランティア活動を行なったか?
つまり日本人は、見知らぬ人を助けないし、寄付もしないし、ボランティアもしない、という結果になってしまったというわけだ。
ところで、この「寄付指数」という言葉であるが、これはあきらかな誤訳だ。そもそもこの指数は、イギリスの慈善団体のレポートなので原文は英語。その英語のタイトルは「World Giving Index」だが、「Giving」=「寄付」ではない。たとえば『ロングマン現代英英辞典』では、「giving」の語義として「kind, caring, and generous」としているし、『ウィズダム英和辞典』『ロングマン英和辞典』の両英和辞典でも、「優しい、思いやりのある、寛大な」といった訳語が並んでいる。そもそもの言葉の意味からしても、調査項目の内容からしても、「giving」を「寄付」と訳すのは明らかに間違いだ。なので「世界寄付指数ランキング」は、「世界思いやり指数ランキング」と訳すべきだと僕は思う。