富士通の携帯撤退は英断、ハイエンド戦略はもう通じない富士通が携帯電話事業を売却すると報じられた。これで残された日本メーカーはソニー、シャープ、京セラの3社のみ。日本勢は生き延びることができるか

富士通が携帯事業から撤退
高機能戦略にも訪れた「限界」

 私が参加している「地下クイズ界」で有名な問題に、こういうものがある。

【問題】そのセキュリティの高さから配偶者に覗き見されるリスクがほとんどなくなったため、その筋では“浮気用のスマホ”と呼ばれているアローズとは、どこのメーカーのスマホでしょう?

 正解は富士通である。もちろん、そういう目的で使用しているユーザーは少数派だと思うが、この問題は富士通のスマホの特長をよく言い表している。富士通のスマホは、山手線の広告でもよく知られているように、とにかくかゆいところに手が届く機能の宝庫なのだ。

 その富士通について、8月22日付の日経新聞朝刊が「携帯電話事業を売却する方針を固めた」と報じた。

 報道に対して富士通は、東証で「当社が発表したものではない」と情報開示したが、同時に「他社とのアライアンスを含め様々な可能性を検討しているが、決定しているものはない」と発言したところを見ると、すでに売却交渉がかなり進んでいるのは間違いないようだ。

 それにしても、日本の携帯電話(スマートフォン)メーカーは減少の一途を辿っている。2000年に11社あった携帯メーカーは、もし富士通が撤退すれば、残りはソニー、京セラ、シャープの3社だけになる。パナソニック、三菱、NECはすでに市場から撤退し、三洋電機、カシオ、東芝、日立は他社と統合して、やはり撤退している。

 同時に富士通が消えるということは、旧電電公社ファミリーの携帯電話会社が姿を消すことを意味する。iモード以来、NTTドコモが主導して携帯電話市場を牽引してきた図式が終了するという点において、感慨深いものはある。