経営 X 人事

社員寮が復活!ショールームや災害拠点併設など新タイプ続々

社内人脈作りに一役
福利厚生ではない寮

 単なる福利厚生としての寮ではなく、新たな特徴を与え、「経営戦略」の一つと位置付ける企業もある。

伊藤忠商事の建設中の社員寮。完成イメージ

 伊藤忠商事は、来年4月の完成を目指し、神奈川県横浜市の東急東横線日吉駅のすぐそばに社員寮を建設している。現在使われている4棟の男子寮を統合、7階建て360戸の巨大な寮にする計画だ。普通に借りたら家賃10万円くらいの物件だが、寮費は1万円前後。東京都港区の本社まで約30分でアクセスできるため、伊藤忠が進める「朝型勤務」にも対応しやすい。

 コンセプトは、“自然と人が集まる場”。図書を並べた談話コーナーやバーカウンター、エレベーター脇のソファスペースなど、各階にコミュニケーションを弾ませやすいスペースを設けている。スポーツジムやサウナのほか、近ごろは珍しい大浴場と食堂もある。まるで、最近はやりのシェアハウスのようだ。

 人事・総務部の岩田憲司総務室長は、「総合商社なので、扱う商材ごとに縦割りの組織になっており、カンパニー(部門)を超えた会話や交流が乏しいのが現状。これを解消すべく、寮で人間関係を広げてほしいと思った」と説明する。

 寮の新設を推進したのは、寮暮らしを経験した経営幹部や管理職たちだ。前出のSMBC日興証券と同じで、伊藤忠でも00年に経営が悪化した際に独身寮の多くが売却された。それでも、「昔は居室が10平方メートルくらいで狭く、通勤時間がかかる不便な立地だった。それでも仲間がたくさんいる寮は楽しかった」というノスタルジーと、社内人脈の効果をビジネスシーンで実感することが多かったため、復活させた。

 このように伊藤忠では、寮を福利厚生施設ではなく、「人材育成の機会」、そして経営戦略である「健康経営」の一環と捉え、コミュニケーション活性化のための施策だと位置付けているわけだ。

 各社が新設している社員寮は、ただの福利厚生施設ではない。商材のショールームとしての役割や、災害時のBCP拠点としての機能、社内コミュニケーションを促進させる仕掛けなど付加価値を付けている。

 こうした寮は、若手社員にとっても、「(家賃が)安い・(会社に)近い・(プライベートが守られて)快適」という3拍子が揃っているため人気が高い。実際、東京近郊に実家があっても入寮できるJFEエンジニアリングの寮では、「ひとり暮らしを始めるハードルが低く、安心して体験できる」として新入社員のほぼ全員が入居しているという。

 ただの住み処ではなくなった寮は、今後しばらく、人気を博しそうである。

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