ウーバーの問題は、悪しき経営慣行にとどまらず、その競争優位の源泉にある――。こう糾弾するのは、HBSのエデルマン准教授だ。同社の違法性を改めて問う。


 ウーバーは、多くの乗客にとって天の恵みのような存在だ。タクシーより料金が安く、車両は清潔で、運転手は礼儀正しく、手軽に電子決済ができる。

 けれども、同社の相次ぐ不祥事は、何かが大きく間違っていることを露呈している。6月にはついに、元司法長官エリック・ホルダーによる厳しい調査報告が発表された。

 同社の一連の過ちを、創業者兼CEOトラビス・カラニックの個人的な失態のせいとする向きもある。それもたしかに同社の問題の一端であり、彼のCEO辞任はおそらく適切であろう。カラニックと他の最高幹部らは、許容される行動とそうでない行動の違いを身をもって示してきたのだから、倫理的・法的に問題ある同社の決定や行いに関して明らかに責任がある。

 だが私は、これは有害なリーダーシップから生じた、企業文化の問題にとどまらないものだと指摘したい。ウーバーの文化的機能不全は、私が思うに、まさに同社の競争優位の本質に根差すものである。すなわち、ウーバーのビジネスモデルは法規違反を前提としているのだ。そして、意図的な違法行為を通じて成長してきた同社が、規則順守の方向に転換するのは容易ではない。

●ウーバーの根本的な違法性

 ウーバーがタクシー事業にいくつか重要な改善をもたらしたことは、いまでは周知の通りだ。だが、同社が創業した2010年までには、都市部のほとんどのタクシー車両にはGPSおよびタクシー会社独自のハードウェアとソフトウェアが装備されていた。これらの点では、ウーバーは既存事業者の装備や方向性とたいして変わりはなかった。

 また、なにもウーバーだけが、高額なタクシー営業許可などが配車予約サービスには必要ないと気づいたわけではない。予約による配車は、多くの都市で他の新興企業もすでに採用していた戦略である。

 ウーバーが賢明だったのは、(電話ではなく)スマートフォンのアプリを用いて乗客に配車リクエストをさせたこと、そして運転手に(自社専用のハードウェアではなく)一般的なスマートフォンを装備させることで、大幅なコスト削減に成功したことだ。

 だが、これは他社も追随した。結局のところ、ウーバーの技術的前進のほとんどは、競合他社も短期間で考案したであろうアイデアだったのだ。

 ウーバーが既存の事業者を凌いだ最大の優位は、特別な免許もその他の手続きも伴わない、一般車両を活用したことであった。ウーバーとその運転手は、商用でない一般車を用いることで、営業用の保険、営業登録、営業用のナンバープレート、特別な運転免許証、身元審査、厳格な商用車両検査などを不要とし、さまざまな出費を回避した。これらによって、タクシーや従来型の配車サービスよりもはるかに大きなコスト優位を手にする。その低コストが消費者への低価格をもたらし、人気と成長につながった。

 だが、このような非商用車の起用は、そもそも違法である。ほとんどの行政区域では、旧来からの規則によって上記の営業保護すべてが必要とされており、ウーバーが思い描く事業に対しても例外は認められていない(公平を期すために明記すると、最初に始めたのはウーバーではなくリフトだ。この点については後述する)。

 さらに、ウーバーはその最も優れたケイパビリティを、自社の違法性を擁護することに注いだ。ウーバーのスタッフ、利用手順、ソフトウェアシステムは、乗客と運転手を規制当局や議員へのロビイングに加わらせる目的を持つ。ウーバーの手法を疑問視するあらゆる人に、政治的トラブルを生じさせようというわけだ。

 同社の弁護士集団は、過去の論争を基に隙のない論拠を築いて展開した。これに対し、個々の行政区域はたいてい穏当な訴訟チームを伴って、白紙の状態からウーバーに単独で接するばかりであった。ウーバーの広報担当は自社をイノベーションの具現として表現し、批判者を過去に囚われた既成勢力の操り人形扱いした。

 このような戦術を通じて、ウーバーは事態を混乱させていく。明快で広範に適用可能な法を、ほとんどの行政区域で無視しながら、ウーバーは法の施行を遅らせたり止めさせたりすることにたいてい成功し、ゆくゆくは自社の手法が許可されるよう法を変えていった。そして、同社のビジョンが新たな常識となるにつれ、その戦略が当初明らかに違法であったことは、たやすく忘れ去られた。