内外の国民投票、住民投票の現場取材を重ねてきたジャーナリスト今井一氏が、『「原発」国民投票』を上梓した。国民投票の意義から実施のシナリオまで解説した興味深い1冊だ。今井氏に、なぜいま日本に国民投票が、そして原発についての国民投票が必要なのか、インタビューした。
――なぜ今、『「原発」国民投票』を書かれたのですか。
「原発」国民投票の必要性については、15年前から主張してきました。当時から、「安保・原発・消費税、大事な問題は議員任せにしないで国民投票で決めよう」と言っていたのです。子ども手当をどうするかとか高速道路無料化のような問題は、議員任せでもいいのです。でも、原発や日米安保条約をどうするか、とか脳死や臓器移植の問題は、あまりにも重大で、議員にゆだねるのはよくないと昔から考えていました。
私は、長くソ連と東ヨーロッパを取材してきて、ソ連が崩壊する直前から、バルト三国やロシア、ソ連で国民投票を活用しているのを現場で見て、圧倒されてきました。あれだけ主権者の意思を無視してきたソ連が、突然直接民主制で1人1人の人民の意見を聞くのを目の当たりにし、衝撃を受けたのです。
日本でも、新潟県巻町で日本初の条例制定に基づく住民投票がありました。テーマは原発建設。原発にかかわる住民投票は、巻町のほかに新潟県・刈羽村、三重県・海山町で行われていますが、巻町以降の15年間、日本ではさまざまなテーマで401件の住民投票が行われています。47都道府県で住民投票を経験していないのは、東京都下の自治体だけで、あとはすべて実施しています。
この401件がボクシングのボディーブローのようにジワジワ効いてきて、できるんだという自信が芽生え、直接民主制の魅力がわかる人が増えています。約15年たって、国民投票の実施を望む声が広がりつつあります。
3月の原発事故が起きてすぐ、私はこれは今書くしかないと思いました。