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森信茂樹の目覚めよ!納税者

論理なき税制改正に陥る恐れあり
民主党の税制決定システムの落とし穴

森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]
【第11回】 2011年9月21日
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生煮え代表選挙の「つけ」

 野田新総理は、民主党代表選で増税の必要性を訴えて当選し、総理の座についた。増税を訴えて総理になった例は自民党にもなく、おそらく初めての政治家ではないか。

 私は、この出来事の背景には、国民の過半が感じている、「いずれ増税はやむを得ない、そのことを正直に語る政治家を選ぶべきではないか」という意向が反映されたのではないかと考えている。その証拠に、就任早々に行われた新聞の世論調査をみると、総理支持率は6割を超えるものであった。

 そうはいっても、増税への道は簡単なものではない。党内には本音で増税反対の議員が多く残っている。前回のこの欄「民主党代表選では、党内融和優先ではなく政界再編の先駆けとなる政策論争を」で指摘したように、代表選で政策議論を徹底的に尽くさず、生煮えのまま選挙だけを行った「つけ」ともいうべきものが今後顕在化する可能性がある。増税に向けて党内の意見を集約することは容易ではない。

 自民党も、簡単には政策協議に応じないであろう。そもそも大平内閣、中曽根内閣、細川内閣という3代の内閣が、増税を志しながらもとん挫し、内閣の命を絶つ要因となったことからもわかるように、常に増税はホットイシューだ。

 望みは、野田総理の演説のうまさである。増税については、国民がやむを得ないと思うかどうかが決定的に重要である。たとえば復興増税についても、あれだけ民主党代表候補は反対したにもかかわらず、国民世論はむしろ賛成意見のほうが多い。このことは、いかに政治家が増税から逃げてきたかということを物語っている。

 その際重要なことは、国民の説得には、一体改革についてのもっとわかりやすい説明と、一層の歳出削減や社会保障改革の具体案を示す必要がある。消費税率を5%引き上げなければならない根拠についての説明は、あまりに複雑で、現状では国民に全く浸透・理解されていない。

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森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]

(もりのぶ しげき)法学博士。東京財団上席研究員、政府税制調査会専門家委員会特別委員。1973年京都大学法学部卒業後、大蔵省入省、主税局総務課長、東京税関長、2004年プリンストン大学で教鞭をとり、財務省財務総合研究所長を最後に退官。その間大阪大学教授、東京大学客員教授。主な著書に、『日本の税制 何が問題か』(岩波書店)『どうなる?どうする!共通番号』(共著、日本経済新聞出版社)『給付つき税額控除』(共著、中央経済社)『抜本的税制改革と消費税』(大蔵財務協会)『日本が生まれ変わる税制改革』(中公新書)など。
 

 


森信茂樹の目覚めよ!納税者

税と社会保障の一体改革は、政治の大テーマとなりつつある。そもそも税・社会保障の形は、国のかたちそのものである。財務省出身で税理論、実務ともに知り抜いた筆者が、独自の視点で、財政、税制、それに関わる政治の動きを、批判的・建設的に評論し、政策提言を行う。

「森信茂樹の目覚めよ!納税者」

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