「欧州ソブリンリスクが表面化している」「米国のバランスシート調整には時間がかかりそうだ」――。

 さて、ここで小難しいことをお話するつもりはありません。今、「米国で失業者が増えているそうだ」とか、「ギリシアがなんだか大変らしい」などと、なんとなく世界で景気が減速していると感じている方も多いのではないでしょうか。

 新聞やテレビなどのニュースで、冒頭のような言葉が頻繁に出てくるからだと思うのですが、そもそも「ソブリン」や「バランスシート調整」ってどういう意味なんだろう? と考え込む方もまた多いのではないでしょうか。つまり、欧米の景気は悪化しているようなのだけど、なにが起きているのか、なぜそうなっているのかは、よくわからない。

 わたしたち特集メンバーにも、普段取材をしていたり、他のメディアのニュース記事を眺めていたりして、こんな疑問が浮かびました。「これらのキーワードは、意味をしっかり理解し、丁寧に言葉を選んだうえで使われているのだろうか」――と。

 たとえば「ソブリンリスク」。ソブリンとはどういう意味で、先進国が破綻するとは一体どういうことなのか、考えたことはあるでしょうか。あるいは誰でも分かるように、平易な言葉だけで説明できる人は、じつは稀なのではないでしょうか。ちなみにこの「ソブリンリスク」は、なにも国債の返済ができなくなる、ということだけを意味するわけではありません。

 そこで今回は、とにかく言葉を噛み砕いて、誰にでも分かるように平易な言葉で、今、世界で起きていることを解説しようと試みました。なんといっても「20分でスラスラ分かる」がウリです。というのも、見開き2ページで1テーマ、計10幕から成る“紙芝居”形式で、リーマンショックから立ち直りかけた世界経済がなぜ再び失速し、長期不況へと突入しそうなのかを解き明かしていきます。

 経済誌だからと、普段甘えている部分があったかもしれません。専門用語に逃げていたといわれればそうでしょう。「インフレって言葉も分からないんじゃないか、これじゃまだ分かりにくい」。ああでもないこうでもないと、メンバー間でこんなやりとりをしながら特集を作ったのは、初めてだったと思います。

 インフレも、決して悪いことじゃないのに、なぜ新興国で問題視されているの?と、金融緩和という言葉もできるだけ使わずに、いかに新興国の悩ましい状況を文字にするかに腐心しました。

 個人的には、経済のことなどめっきり分からない母親がメルクマールです(苦笑)。理解できたかどうか、早速聞いてみたいと思っています。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 池田光史)

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