新設住宅着工戸数は、ついに80万戸台(年間)があたりまえになりつつある。今年は少しばかり上向くことが予想されるが、もうかつてのように100万戸を上回るようなことは二度とないだろう。なぜなら、住宅市場の根本的な構造変化が起きているからだ。持家vs賃貸、さてどちらにするべきか。
「景気対策」に使われた住宅政策
住宅政策は長らく景気対策の道具として弄ばれてきた。景気後退局面では必ず「住宅政策は経済波及効果が高い」「生産誘発効果が大きい」として新築住宅の建設、販売に焦点があてられ、金融緩和や税制優遇などを利用してきた。というのも、住宅がひとつ売れると生産誘発効果が2倍程度あるとされているためだ。
例えば2000万円の住宅がひとつ売れれば4000万円の乗数効果があるとされる。これほど効率のよい産業は他に見あたらず、ちょっと景気が悪くなると必ずといっていいほど、住宅政策が景気対策の道具として用いられてきたのだ。
住宅業界はハウスメーカー、マンションデベロッパーなど「新築持ち家団体」が最も強く、次いで宅建業者など「不動産仲介業界団体」、かなり遅れて「賃貸・賃貸管理系団体」という状況だ。彼らは団体として政策提言を行ったり集団で意思表明を行うことで、政治的にも力を持っている。政治の世界から見れば彼らは有権者だから、政治家はそれに耳を傾けることになる。このような構図の中で今の日本の人と不動産の関係は創られてきた。
しかし、人口減少が進むなか新築住宅を造り続けるのは、空き家は増えるばかりで街の価値は毀損、所有者の住宅価値は下がり、大きく見ると誰も得をしない。いや、新築住宅を販売した業者だけが目先的に得をしているということになる。
本来はもう新築を造ることより、住宅の滅失(取り壊し)や、減築(建物の一部を取り壊して小さくすること)などを本格的に検討する局面だ。
※参考 住宅業界はこんなふうにできている
http://ameblo.jp/03630912/entry-10853897016.html
またすでに書いてきたように、買ったそばから価値がガタ落ちする中古住宅市場では、住宅の価値が10年で半値25年程度でゼロ。要するに、住宅ローンが減るのと、住宅の価値がなくなるのと、どちらが早いか競争しているようなものだ。
最近では、住宅を購入してローンを返済している世帯が、そうでない世帯に比べて消費を落としていることが知られるようになった。実は新築持ち家に偏重した経済対策としての住宅政策が、長期的に内需経済を傷めているのではないかということが言われ始めている。